研究課題/領域番号 |
26460874
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
塚 正彦 金沢大学, 医学系, 教授 (00272956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 未破裂小動脈瘤 / マトリックスメタロプロテアーゼ / 組織脆弱性 |
研究実績の概要 |
交付申請書にある「研究の目的」、「研究実施計画」に照らした研究の成果について、その具体的内容、意義、重要性等について以下報告する。ヒト脳脊髄液及び脳動脈材料の採取及び検査法の精度向上が本研究の重要な基礎となる。1)検査の質即ち感受性及び特異性の向上を図った。本来高感度であるゼラチナーゼ解析は脳血管を含む様々な血管試料に対応しうるが乾燥重量等でその標準化に努めた。26年度脳脊髄液のプロテアーゼ活性の概要をヒト材料で確認することに重点を置いた。タンパク量30microgramを試料に用いたゼラチンザイモグラムでは、正常ヒト脳脊髄液のプロテアーゼ活性は検出下限程度であることが判明した。2)検査法汎用化の一環として、検査コスト削減の可能性を探った。組織材料の集中化を法医解剖事例の病理組織学的検索で試み、tissue array的手法で血管組織を含む平均15検体をマイクロカセット3個程度で収めることに成功している。ゼラチンザイモグラフィーでは界面活性剤や基質に用いるゼラチンの代替品の使用が可能であるかを検討した。3)遺伝子改変マウスを用いた解析は、26年度知り得たヒト材料でのプロテアーゼ活性の概要を踏まえて、血管及び脳脊髄液をヒト同様に扱い基礎的実験を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」の達成度について、以下、自己点検による評価を行う。初年度である平成26年度はヒト脳脊髄液・組織材料採取及び検査法の精度向上に勤めた。ヒト脳血管(動脈)組織は、内因性急死例を中心に対照としての冠動脈と共に採取された。 1)虚血性心疾患が年間5例、死因の責任病変とならない不完全狭窄病変は年間100病変を越えた採取及び検索がなされたため、当初予定していた50病変を大きく上回った。 2)脳動脈瘤破裂5例、脳動脈瘤を死因としない未破裂の脳動脈瘤は年間20事例で確認され、複数の病変を有する事例が含まれるため延べ約30病変が予想されたが、26年度の統計でほぼ見込み通りであった。また、慢性疾患の脳血管(動脈)組織についても対照としての冠動脈と共に採取された。3)脳血管性認知症が年間5~10例が見込まれ、粥腫性動脈硬化性病変は複数の病変を有する事例が多く含まれるため延べ約100病変以上が見込まれた。対照として大動脈及び左総頸動脈については全例場所を決めて採取するため年間50検体が見込まれた。以上の見積もりにより、「形態学的観察及び生化学的解析に必要な組織量が本研究において不足する事はない。」と予想されたがが、無事達成できた。このように、法医解剖における死因検索にための採材は期待通りに行う事ができたが、平成26年度中に生化学的解析の端緒を掴むことができなかったため、翌年の課題として持ちこされた。
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今後の研究の推進方策 |
1)小動脈瘤の存在、中枢神経が関わる器質性疾患の存在の有無について、あえて対応付けは行わなかったが、今後はゼラチンザイモグラフィーの感度を上げつつ、対応付けを行う予定である。 2)ヒト病変解析に並行し初期の達成度に応じて脳脊髄液の生化学的検査を一般化するための戦略を立てる。また、異状死体検死において脳脊髄液試料採取と測定を試みて、α-Klothoから知り得る「長寿度」即ち「年齢推定」の糸口を掴みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の移動なども重なり、若干の予定変更が余儀なくされた。その事とは別に、実験結果に照らし合わせて、より精度の高い機器の購入を希望したが、購入金額面で折り合いがつかず、当初予定していた当該年度の購入が見送られた。さらに、生化学的解析がやや遅れたために、消耗品購入が平成26年度中に予定した執行額のたっしなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度、実験結果の実情に合わせて最適な機器を選定する予定である。また、生化学的解析の遅れを取り戻すために2年目にあたる平成27年度の消耗品購入をやや多くする。
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