研究課題/領域番号 |
26460875
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
島田 一郎 福井大学, 医学部, 准教授 (20272908)
|
研究分担者 |
三好 憲雄 福井大学, 医学部, 助教 (40209961)
伊保 澄子 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (80151653)
鈴木 史子 福井大学, 医学部, 特命助教 (80291376)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 高濃度酸素曝露 / 瀰漫性肺胞傷害 / 活性酸素種 / c-Myc / Bax / 肺サーファクタント蛋白 / NIH/3T3 細胞株 / A549 細胞株 |
研究実績の概要 |
【変更があった当該年度の目的】高濃度酸素曝露は、瀰漫性肺胞傷害(Diffuse Alveolar Damage:DAD)を誘発する。我々は、高濃度酸素曝露によるDAD発症マウスを用いた in vivo 研究を行い、その肺における遺伝子発現の変化を調べた結果、c-Myc と Bax の発現亢進および Surfactant associated protein (SP)-A および C の発現抑制を報告している(Shimada, Int J Legal Med 2008;122:373-83)。今回、DAD発症の病態生理を分子生物学的に解明する目的で、肺を構成する組織・細胞モデルとして2種類の培養細胞を用いて in vitro 研究を行った。用いたのは、マウス線維芽細胞様細胞株: Mouse fibroblast-like cell line, NIH/3T3 および ヒト肺腺癌細胞株: Human lung adenocarcinoma cell line, A549 である。 【結果】(1)マウス肺 および 線維芽細胞様細胞株 NIH/3T3 において、高濃度酸素曝露により c-Myc 遺伝子の発現亢進を認めた。(2)マウス肺 および ヒト肺腺癌細胞株 A549 において、高濃度酸素曝露により Bax 遺伝子の発現亢進を認めた。(3)NIH/3T3 および A549 において、高濃度酸素曝露により、過酸化水素(H2O2)生成の増大、Caspase-3/7 活性の亢進、apoptosis 誘導を認めた。(4)マウス肺および A549 において、高濃度酸素曝露によりSP-C の発現抑制を認めた。 【考察】以上の結果から、高濃度酸素曝露肺におけるDAD発症機序について下記のことが示唆される。(1)高濃度酸素曝露により、活性酸素種が発生する。(2)(1)に伴い、線維芽細胞では c-Myc signal 活性化と apoptosis 誘導が起こる。(3)(1)に伴い、肺胞上皮細胞では intrinsic apoptosis signal 経路の活性化が起こる。(4)(1)~(3)による細胞・組織の破綻が、DAD発症原因の一つとなっている。(5)SP-A および C の発現抑制は、高濃度酸素曝露に基づく肺胞虚脱の原因の一つである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果を Respiratory investigation に投稿し、現在校正中である。この結果を踏まえて、本年度は科研費申請時の目的を忠実に遂行しなければならない。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は下記の実験を中心に研究を進める。 高濃度酸素曝露マクロファージに於いてmtROSが生成され、NLRP3 inflammasomeが活性化されることを明らかにする。 1)mtROSの生成を、MitoSOXTM(mitochondrial superoxide indicator)を用いた方法(Zhou R. Nature 2011; 469:221)により明らかにする。 2)LPS(IL-1β前駆体誘導剤)を添加してまたは添加しないで高濃度酸素を曝露し、NLRP3 inflammasomeの活性化をCaspase-1またはIL-1βの成熟を指標に明らかにする。電子伝達系阻害によるmtROS産生、ならびにLPSとATPで刺激した細胞を陽性コントロールとする。
|