研究課題
ヒトの死と死戦期の状況を把握するため、様々な死亡事例で脳や心臓で死戦期に発現される諸抗原の動態を考察し脳と心臓で死戦期に発現される諸抗原の分布や特徴を用いて法医病理診断に役立てようと試みた。海馬歯状回顆粒細胞層の分子層のレクチンやコンドロイチン硫酸などの抗複合糖鎖抗体に反応する所見を見いだし、認知記憶障害患者では、海馬歯状核分子層に複合糖鎖の沈着が観られることが確認できた。死戦期の長さと顆粒細胞の減少程度に相関関係が観られ、低酸素関連抗原(Hypoxia inducing factor 1 alpha)の大脳黒質周辺での発現も同様に死戦期の長さと相関するという結果が得られたことより脳と心臓で虚血再潅流が起こるとそれぞれの障害が高度となること、脳でのHypoxia inducing factor 1 alphaの発現は死戦期の長さで多くなることも確認できた。虚血組織で発現されている RNA binding motif 3 protein(RBM3)と cold induce RNA binding Protein(CIRBP)の虚血心筋や脳梗塞部での発現状態を e-NOS の発現状態と比較検討した。e-NOSは血管内皮細胞に発現され、RBM3 とCIRBP も同様に血管内皮細胞に発現され、発現強度はe-NOS に比して顕著であった。これらの結果より凍死防御抗原である RBM3抗原は、血管拡張因子としても働くことを明らかとした。頸部圧迫死でのRBM3の反応が顕著だが、心筋梗塞死では反応は陰性か弱く、その他の死因ではRBM3の反応を示すものも見られたが弱かったこの結果より頸部圧迫による死亡事例では、黒質細胞の細胞核に RBM3 の発現が特異的に観られることを見いだされた。
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