研究課題/領域番号 |
26460881
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
工藤 恵子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10186405)
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研究分担者 |
臼元 洋介 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50596822)
辻 彰子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10171993)
池田 典昭 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60176097)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 焼死体鑑定 / GC/MSスクリーニング / 揮発性炭化水素 / NAGINATAスクリーニング |
研究実績の概要 |
火災現場で発見される焼死体の鑑定では、死因の究明だけでなく、焼死か死後焼却かの鑑別、さらには吸引ガスの種類の特定などが必要で、これらの判断には細心の注意が必要である.本研究では、迅速・確実に焼死体の鑑別診断を行うための判断基準を作成することを最終目的とし、本年度は火災時の吸引ガスの種類の特定と吸引程度の判断に有用となる、血液中揮発性炭化水素の定量的スクリーニング法の開発を行った。 まず、ベンゼン,トルエンなどのC6からC9までの芳香族炭化水素10種,ペンタン,へプタンなどのC5からC12までの脂肪族炭化水素8種の計18種を分析対象とし、これらを難揮発性薬毒物のスクリーニングに用いているHP-5MSカラム (30 m) を用いて分析したところ18種の揮発性成分は2.0分から16.0分に溶出し,良好な分離が得られた.p-ジクロロベンゼンをリテンションタイムロッキング化合物に設定することで,常に同じ保持時間で各成分が溶出し,再現性のあるデータが得られることが判明した.血液中揮発性炭化水素の抽出も気化平衡法を用いることで、簡便に行うことが可能であった。 トルエン-D8を内部標準物質として作成した検量線は0.01-10 μg/mlの範囲で良好な直線性を示した.得られた揮発性炭化水素の保持時間、マススペクトル、検量線データを予めNAGINATAデータベースに登録しておくことで,検量線を作成することなしに,迅速に血液中の燃焼ガス成分の確認と大よその濃度が得られ,火災時の吸引ガスへの暴露程度を速やかに判断することが可能となった. 開発したメソッドを焼死事例に応用したところ,死因と火災原因を判断する上で有用な情報が得られることが判明した. 今後事例のデータを蓄積し,これを一酸化炭素ヘモグロビン濃度やシアン濃度と比較することで,焼死体の死因・火災原因の判断基準を作成できると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液中揮発性炭化水素の定量的スクリーニング法の開発については予定通り研究が進んだため、次年度以降に予定していたデータベースの構築、解剖事例へ応用を前倒しで行い、一定の研究成果を得た。 一方シアン化物の簡易分析法確立については、情報収集などを中心に行い、本格的な研究の実施は次年度以降に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
1)血液中シアン化物の簡易分析法の確立:血液中シアン化物の簡易で高感度な分析方法を確立し、NAGINATAのデータベースに登録する。まずは最も簡便な気化平衡法GC/MSを検討するが、実務上問題が生じたときは、誘導体化法を検討する。 2)揮発性炭化水素用カラムの再検討:今年度は利便性の観点から,難揮発性薬毒物のスクリーニングに用いているHP-5MSカラム (30 m) を揮発性炭化水素の分析に使用したが,今後対象となる揮発性成分を増やすために,カラムの種類や長さを再検討する。さらにシアン化物も同時に測定可能なカラムがないか検討を行う。 3)メソッドの検証とデータ収集:解剖事例の焼死体血液を確立した方法で分析し、揮発性炭化水素とシアン化物が問題なく検出されるか検証する。問題があれば随時メソッドの改良を行う。メソッドが確立したら、焼死事例の分析を行い、データを蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に揮発性炭化水素とシアン化物の両方の分析法の確立を予定していたが、揮発性炭化水素の分析法の確立が予定通り進行したため、次年度以降に行う予定であった、データベースの構築やメソッドの検証等を先に行った。そこで当初予定していたシアン化物分析のためのカラム、標準品、ヘッドスペースGC/MSのための必要経費を次年度に回すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
シアン化物分析検討のためのGC/MSカラム、標準物質の購入や、データ収集や研究補助のための人件費、成果発表のための旅費等に使用予定である。
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