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2016 年度 実施状況報告書

DNAのシリカ結合能とシリカ結合性蛋白を利用した珪藻検出法

研究課題

研究課題/領域番号 26460882
研究機関大分大学

研究代表者

瀬尾 泰久  大分大学, 医学部, 助教 (80187830)

研究分担者 岸田 哲子  大分大学, 医学部, 教授 (50136793)
内田 智久  大分大学, 医学部, 助教 (70381035)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード溺死 / 珪藻 / プランクトン / ストレプトアビジン / 酵素染色 / スリレラ属
研究実績の概要

免疫組織化学や酵素免疫測定法などに汎用されるストレプトアビジンには、非特異的にガラス質に吸着する特性があるものと推測されていた。前年度、この特性を利用した珪藻染色法の開発を試み、これに成功した。今年度、ストレプトアビジンが有するガラス質への吸着能を実証するため、それぞれ製造元の異なるペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン3種についてガラスプレート上でインキュベーションし比色法によりその吸着率を算出した。対照として、ペルオキシダーゼ標識IgG、ペルオキシダーゼをそれぞれ用い同様の操作を行った。その結果、対照としたペルオキシダーゼに吸着能は認められなかったものの、ペルオキシダーゼ標識IgGには、ストレプトアビジンの半分程度の吸着能が認められた。また、3種のペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンのうちの1種にはほとんどガラス質への吸着能が認められない事が判明した。そこで、アルカリフォスファターゼ標識したストレプトアビジンを使って同様の吸着試験を行ったところ、アルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジンには、ガラス質への吸着能が存しないことが明らかとなった。したがって、これらのガラス質に対する吸着特性は、ストレプトアビジンやIgGなどにペルオキシダーゼを標識した際に生じる化学的構造の変化により生じたのではないかと考えられた。
そこで、最も吸着効率の優れた標識ストレプトアビジンを使ったワンステップの珪藻染色法を開発した。カバーグラス上に固定した珪藻被殻に、800倍希釈したペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(1mg/ml)をマウントし、室温で15分間インキュベーション、水洗後、発色基質を用いた染色を行い水系封入剤で封入した。この方法により、染色時間が大幅に短縮されただけでなく、珪藻被殻の検出率もほぼ100%であることが確かめられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度研究試料として採取した河川水から、極めて珍しい形態を有する大型の珪藻が発見された。この珪藻は、専門家からの指摘により新種であることが示唆されたため、他機関と共同で詳細な形態観察を行うと共に文献検索を行い、これまでに報告されたことのないスリレラ属に属する種であることが確認された。現在、Surirella Longispiralis と命名し、新種として登録申請を行っている。
さらに、単離した新種珪藻から集めたDNAを使って、s18rRNA領域の部分配列を解析した。その結果、相同な配列を持つ種は未登録であることが明らかとなった。また、分子系統学的にもスリレラ属に属していた。
ところで、この分子系統学的解析の過程で、この新種珪藻にはs18rRNA領域の部分配列に塩基配列の異なる種が混在していることが示唆された。そこで、PCR増幅後の部分配列を大腸菌にクローニングして各クローンの遺伝子配列を解読した。その結果、この珪藻は主として3系統の類似配列を持つものから構成されていることが明らかとなった。また、そのうちの1系統に関しては、多種多様な点突然変異をもつものが派生しており、その構成種の解明に時間を要することとなった。

今後の研究の推進方策

珪藻被殻の染色法については、すでに完成しているので今後実際に溺死した事例に適用し、溺死診断法としての実用化に向けた研究を行う予定である。
新種珪藻については、現在、論文の執筆に取りかかっている。また、分子系統学的解析結果についてもほぼ結論が導き出せたので、今後論文として発表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

珪藻被殻を収集精製する目的で採取した対象水中から新種の可能性のある珪藻を発見した。この珪藻を形態学的に観察したところ、新種であることが確認された。さらに、s18rRNAの部分配列を使った系統学的解析の結果、著しい遺伝的多型性が認められることが明らかとなった。本年度は、この新種珪藻に関する論文の発表を優先した。

次年度使用額の使用計画

本年度は、完成した珪藻染色法を実際の溺死事例に適用するための試薬、消耗品類の購入を行う。
新種珪藻に関しては、遺伝的多型性の解明を行うための試薬類の購入、専門機関との打ち合わせ旅費等に使用する。
論文発表に関わる校正費等に支出する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 壊機法における珪藻検出率低下の原因探求2016

    • 著者名/発表者名
      長野友樹、岸田哲子、瀬尾泰久、黒木浩二
    • 学会等名
      日本法医学会九州地方会
    • 発表場所
      福岡県 久留米市 久留米大学筑水会館
    • 年月日
      2016-10-14 – 2016-10-15

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公開日: 2018-01-16  

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