研究実績の概要 |
[目的] 法医解剖での低体温症診断は特異的な剖検所見を欠くことから、実際には除外診断となっている。本研究では法医実務への応用に向け、低体温症バイオマーカーの検索、診断法の構築を目的とする。さらに各臓器の遺伝子発現データを相関分析で統合し、低体温症の全身反応を明らかにする。 [方法] マウス低体温症モデルを導入し、低体温症バイオマーカーの検索に向け副腎、左心室心筋、腎臓、肝臓、肺のトランスクリプトーム解析をDNAmicroarray法で行う。さらに定量PCR法を用い遺伝子発現の再現性確認を行う。また再現性が確認できた遺伝子に関しては、免疫染色を施行し鑑定法の構築を試みる。一方、低体温症の全身反応を明らかにする観点から副腎、左心室心筋、腎臓、肝臓、肺のDNAmicroarrayデータに相関分析を適用する。 [結果] 平成27年度までに副腎、腎臓の低体温症マーカー検索は完了したことから、平成28年度は左心室心筋、肝臓、肺の低体温症マーカー検索を中心に行った。左心室心筋で DNAmicroarray法で発現変動していた遺伝子は3438個であり、1704個は有意に発現が上昇し、1734個は有意に発現が減少していた。最も発現が上昇していた遺伝子は granzyme Aで、最も発現が減少していた遺伝子は solute carrier family 41, member 3であった。これら遺伝子を含む発現上昇上位3遺伝子、発現減少上位3遺伝子の再現性を定量PCR法で確認した。また免疫染色でgranzyme Aの弱陽性像を認めた。一方、肝臓、肺のDNA microarrayデータからは、特に肺において好中球に関連する遺伝子が変動することを示唆するデータを得ており、これら遺伝子を含め、定量PCR法を用いた遺伝子発現の再現性確認を行っている。
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