研究課題
2016年度は汚染危惧食品に含まれる未知化学物質の検索を行った。2015年度に分析した食品9種類に加え、キムチ、生餃子、水餃子、野菜炊き合わせ、筑前煮、ひじきと豆のサラダ、ニシン甘露煮、ぬか漬きゅうり、ぬか漬たくあん、みそかつおニンニク、ニラ野菜炒め用ミックス、子持ちししゃもフライ、大粒むきえび、えびいか、しまほっけ一夜干し、塩さばフィーレ、殻付きしじみ、塩クラゲ、干し杏など30品目の国産と中国産の食品についてガスクロマトグラフィー(GC)/質量分析法(MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)/MS、HPLC/タンデム質量分析法(MS-MS)、HPLC/飛行時間型質量分析法(Tof-MS)を用いて行った。分析前処理は厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課通知による「加工食品中に高濃度に含まれる農薬等の迅速検出法」を用いて行った。前処理後の試薬は液-液抽出や固相抽出カラムによって極性から微極性、微極性から非極性分画に分離した後、極性から微極性成分はエレクトロスプレー(ESI)によってイオン化(陽イオン化と陰イオン化の両方)してLC/MS、LC/MS-MS分析を行うとともに、試料を完全に乾固した後、TMS誘導体化してGC/MS分析も行った。微極性から非極性成分はヘキサン酢酸エチル液をGC/MSに直接注入する方法とTMS誘導体化した後、GC/MSへ注入する方法の両者を行った。GC/MS分析では食品由来のアミノ酸、糖、脂肪のほか、指定化合物3102種、食品香料参考企画1482種が検出された。どの食品も中国産のものが国産のものより多くの未知有機化学物質が検出され、とりわけ中国産のキムチ、カクテキから医薬用外劇物に指定されているトルエンとキシレンが検出された。LC/MS分析でも中国産の食品の方がより多くの未知有機化学物質が検出された。しかし、中国産の食品からも農薬成分は検出されなかった。
3: やや遅れている
分析に用いたLC-ESI/MSが非常に高感度であるため不安定であり、途中で経年劣化による故障を起こし、修理したりしていたため、器具・容器包装からの長期保存(溶出)実験ができなかった。また、未知有機化学物質のスペクトルデータからの検索はGC/MSではかろうじて可能であったが、LC-ESI/MSによる検索は非常に困難であった。来年度は超高速液体クロマトグラフィー(UPLC/四重極飛行時間型(Q-Tof)MSにより精密分析を行い、未知有機化学物質の特定に結び付けたい。
汚染危惧食品の種類を今年度より幅広く増加させ、中国製ギョーザや鰻のかば焼き、チリ産サーモンを始めとする種々の食品で中国産、韓国産、チリ産、ノルウェー産、ドイツ産、フランス産、イタリア産、日本産のものからどのような劇毒物が検出されるか、されないか比較検討する。GC/MS、LC-ESI/MSに加え、大気圧イオン化(ACPI)LC-/MS、UPLC/Q-Tof MS分析を行い、検索精度を向上させて検討する。器具・容器包装からの長期保存実験のほか、初年度よりシビアな条件(油を用いて200°Cで浸漬、4%酢酸で浸漬など)で溶出実験を行い、現在広く使われている食品保存容器から有害化学物質が溶出されてこないか検討する。汚染危惧食品から検出された劇毒物、溶出実験で溶出されてきた劇毒物についてGC/MSもしくはLC/MSによる定量法を確立する。さらに、その化合物のLD50、突然変異原性についても余裕があれば検討する。
分析機器LC-ESI/MSの故障による分析実験の進捗が遅れたことによる。
汚染危惧食品の種類を増加させ、中国産、韓国産、チリ産、ノルウェー産、ドイツ産、フランス産、イタリア産、日本産のものを比較検討することと、溶出実験をよりシビアな条件で溶出させること及び溶出長期保存実験を行うことにより消費する予定である。
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