研究課題/領域番号 |
26460891
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
林田 眞喜子 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60164977)
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研究分担者 |
植草 協子 日本医科大学, 医学部, その他 (50409215)
安部 寛子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40707204)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 法医中毒学 / 質量分析 / 薬毒物分析 / QTOF / LC-MS / 代謝物 / 代謝経路 |
研究実績の概要 |
本研究は,QTOF質量分析データを用いて,法医中毒薬毒物ならびに代謝物の高感度・高選択的な包括的マルチプロセス解析の検討を行い、イオン抑制効果を含めた法医中毒薬毒物ならびに代謝物の保持時間-MSMS-精密質量データベースを作成し、法医中毒薬毒物が関連する中毒患者試料や剖検資料へ応用、法医中毒薬毒物QTOFノンターゲット分析より得られる構造情報を用いた包括的マルチプロセス解析の構築と検証を目標とした。 初年度は、まず、QTOF質量分析データの解析の効率化のために、危険ドラッグを含めた古典的な規制薬物ならびに中枢神経作用薬など広範囲薬物についてイオン抑制効果の確認を行い、前処理法の検討を行った。全血を用いた前処理法ではQuEChERS法が良好な結果が得られた。LC-MSMS法ではMRM法により,1ng/mL以上での検出が可能であった。確認手法にトリガーMRM法を使用することで全血中における偽陽性の低減が可能であった. QTOF法ではAll Ions MSMS法およびAuto MSMSを使用して薬物スクリーニングを行った.その結果,All Ions MS/MS法では全血中1ng/mLでフラグメントイオンによる薬物の確認が可能であり,AutoMSMS法では全血中10ng/mLでプロダクトイオンスペクトルによる薬物の確認が可能であった. さらに、代謝pathwayについて文献調査し,生体内に存在する可能性がある代謝物・グルクロン酸抱合体などをリストアップ、モノアイソトピック質量データベースを作成ののち、Agilent MassHunter Metabolite IDを用いて代謝物の探索し,パーソナル化合物データベースを拡充し事例に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでにベンゾジアゼピン系薬物を中心とした法医中毒薬毒物の保持時間タンデム四重極、四重極-飛行時間型質量分析計用データベースを作成、精密質量データベース・スペクトルライブラリを活用している。今回これらに、危険ドラッグを含めた古典的な規制薬物ならびに中枢神経作用薬などを追加した。QTOF質量分析データから得られる構造式を推定・組成式の計算を行い,代謝pathwayデータベースによる構造情報と精密質量を関連づけた。 今回新たに対象とした危険ドラッグの合成カチノン類や合成カンナビノイド類では、新規化合物が多く標準品の入手が困難であること,スペクトルライブラリが存在しないなど、同定や定量分析が困難であることが判明した。LC-MSMS法ならびにQTOFデータベースライブラリを作成し広範囲薬物包括分析法を構築することが可能と思われた。 今回、Mass Hunter Metabolite IDを用いて代謝物の検索が可能であったのは、Diphenidine、5-Fluoro-AMB、α-PHP及びPV-9などの事例で、水酸化体やそのグルクロン酸抱合体などが検出された。さらに検出された代謝物は標準品がないことから、EPIC理論を用いた構造の妥当性の評価を行うことで同定の信頼性を向上させ、非常に有効であることが示された。当初の計画以上の進展が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、QTOF質量分析データに含まれる大量の化合物情報のなかから目的とする結果を導き出すための包括的マルチプロセス解析を簡明に示すことを目的とし、法医中毒薬毒物が関連する中毒患者試料や剖検資料のQTOFノンターゲット分析でのデータ集積を進めること,1.法医中毒薬毒物の代謝pathwayデータベースの作成,2.法医中毒薬毒物が関連する中毒患者試料や剖検資料への保持時間-MS/MS-精密質量データベースライブラリの応用,3.Mass Hunter Metabolite IDブラウザを用いたQTOFデータ解析,4.法医中毒学ライブラリを用いたQTOFノンターゲット分析の評価,などである。 具体的には、平成26年度にに得られたLC-MSMS法ならびにQTOFデータベースライブラリを用いた広範囲薬物包括分析法を法医中毒薬毒物が関連する中毒患者試料や剖検資料に応用、代謝物探索用ソフトウエアを用いて代謝物の探索を含めたスクリーニングを実施する。さらに推定した代謝物はその精密質量プロダクトイオンスペクトル及びEPIC理論による代謝物推定を行う。 また、想定される課題としてはスクリーニングを実施してもいかなる化合物も検出されない事例が出現しうる可能性があることである。原因としては、データベース収載化合物数の不足、あるいは新規化合物の出現が考えられる。代謝物の探索については親化合物が同定できないかぎり代謝物の探索は不可能である。このような事態には、出来るだけ多くの新規危険ドラッグや推定される代謝物データベースの構築を行うことで対応したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度はMass Hunter Metabolite IDソフトウェアの購入を主目的とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、新規化合物など試薬購入などの消耗品、ならびに分担研究者・研究協力者とのデータ共有を拡充させたい。
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