研究実績の概要 |
微生物として炭疽菌(B. anthracis Pasteur II), ペスト菌(Y. pestis P3-417), ボツリヌス菌(C. botulinum Lamanna (Type B))等およびバクテリオファージ(γphage)を使用した. 培地は, 寒天培地および液体培地を使用した. 菌体は純培養で寒天培地上に生じるコロニーを集菌した.γphage の培養は炭疽菌の代替菌としてセレウス菌(B. cereus ATCC4342)を宿主に用いて培養を行った. 菌体抽出法は菌体を1%トリフルオロ酢酸に懸濁し, ビーズ破砕したものを抽出液とした.培養液に対しては, 得られた抽出液は遠心分離後の上清を無菌濾過した.これらを測定範囲m/z 1,000-10,000に限定し, α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸を用いたMALDI-TOF MSで解析を行った.その結果、細菌の菌体については, それぞれ異なるMALDI-TOF MSのマススペクトルが得られた. 培養液についてはボツリヌス菌において, 培養前と培養後のマススペクトルを比較すると, 培養することで発生する分子群と思われるマススペクトル変化が観察された. さらにγファージに感染したATCC4342株の培養液において, ファージ本体に由来すると思われるピークが観察されたことから, ウイルス含有培養液にも適用できることが示唆された. また微生物の凍結乾燥試料, リポソームを含めた製剤材料の検出やレジオネラ感染マクロファージのMALDI-TOF MSの検出も試みた.
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今後の研究の推進方策 |
マウス等の実験動物を用いて感染実験を行い, 感染臓器に形成される菌塊から微生物の感染時特有のマススペトルパターンが得られるか検討し, 同時に感染臓器の感染時特有のマススペトルパターンが得られるかを検討する. 感染臓器中のどこに微生物等が侵襲しているかを特定するために, MALDI-MS Imagingを検討する. また, まだ取得していない微生物種や製剤や動物細胞への感染モデルでののマススペクトルパターンの取得など, 遅れているデータの取得を行う.
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