研究課題
機能性疼痛性障害に共通する中枢神経異常のメカニズムの解明を目的として、3つの機能性疾患、機能性ディスペプシア、外陰部痛、過敏性腸症候群、およびポジティブコントロールとして、クローン病を対象に、ベルギー・ルーベン、フランス・グルノブルとの共同研究として、同一のプロトコールによりニューロイメージング研究を進めている。28年度までに、それぞれの施設で予定人数のニューロイメージング予定人数は終了した。それぞれの施設のデータについての解析を進め、日本のデータについては、28年度は特に静止時の脳活動(resting state fMRI)データの解析を進めた。従来のシードをおいて、安静時のデフォルトモードネットワークの解析を行うとともに、デフォルトモードネットワーク、および疼痛関連領域の関心領域(ROI)をおき、それぞれの部位のrsfMRIの時系列変化を取り出して、部位間の偏相関係数を求めた。そのデータを元に、Graph theoryに基づいて、ROI間の相互作用の特徴を求め、対照群と過敏性腸症候群で比較検討を行った。その結果、左の偏桃体と右楔前部の局所結合が、対照群よりも過敏性腸症候群で強く認められた。一方Graph theoryの解析指標には両群での差は認められなかった。本データに基づき、ベルギー、フランスの対象においても同様の解析を進めて、比較検討する予定である。内臓痛・外陰部痛誘発の機能性脳画像の解析は、米国コロラド大学ボルダー校との共同研究により、機械学習を応用した手法を用いて、すでに同施設が作成した疼痛脳パターン(Signature of pain)に照合し、パターン解析を行っている。当初の予定であった、上記疾患に加えて、線維筋痛症との比較、および内臓痛と体性痛の比較を行い、最新の手法で検討している。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定人数の検査を終え、解析段階に入っている。解析したデータは順次、国際学会での発表、および論文化を進めている。予定に加えて新たな機械学習の解析法を導入し、共通基盤を比較する方法とし非常に頑健なシステムが構築できている。
内臓痛、外陰部痛刺激の機能性画像については、まず健常群での、胃刺激、大腸刺激、外陰部刺激、さらに、申請者の保持している食道刺激、および、新たに共同研究を始めた米国コロラド大学の上腕の温熱刺激による体性痛を比較して、内臓痛痛と体性痛の違い、および、食道、胃、大腸刺激による内臓痛の違いを、機械学習をもちいたアルゴリズムによるパターン解析で明らかにする。解析データを分担しつつ随時、国内外の学会で発表し、論文化する。また、機能性疾患対象の疼痛時の機能性画像については、機能性ディスペプシア、外陰部痛、過敏性腸症候群、クローン病、線維筋痛症を対象に、これまで得られたそれぞれの施設でのデータを機械学習アルゴリズムで作成したそれぞれの疾患特異的な脳活動パターンを作成し、その脳活動パターンの特徴、相似性、相違性について検討する。rsfMRIデータについては、機能性ディスペプシア、外陰部痛、過敏性腸症候群、クローン病それぞれの疾患群と対照群を対象として、同一のROI、統一の解析パラメータを用いてgraph analysis を行い、比較検討する。またspectroscopyのデータの取得も終了し、前処理を終了したので、過敏性腸症候群と健常群との比較を行うとともに、疾患重傷度、病歴、不安、うつ、身体化指標、アレキシサイミア尺度等の心理検査との相関解析を行う。結果を随時発表していき、今回の企画で形成した国際ネットワークを生かし、さらに疼痛の脳活動パターンの解明、および慢性疼痛の病態パターンの解明、解明した脳活動パターンを用いて臨床上の診断、病態予想に有用な脳活動マーカーの作成を次のステップとして目指す。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件)
Psychosomatic Medicine
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in press
心身医学
PloS One
巻: - ページ: -
10.1371/journal.pone.0157347
行動医学研究
巻: 22 ページ: 65-70