研究課題
国際共同研究(ベルギー、フランス)により、機能性疼痛障害の中枢性バイオマーカーを探索する研究を行った。日本では、過敏性腸症候群(IBS)を対象に、直腸内に留置したバロスタットバッグを拡張する刺激を行い、その予期、および内臓感覚誘発時の脳活動を機能性磁気共鳴装置(fMRI)を用いて検討した。まず予期の影響にういて、次に直腸に拡張刺激が来るか来ないかわからない状況(Uncertain)と、必ず拡張刺激がくるという予期(Certain)の、内臓感覚の中枢処理に対する影響を検討した。その結果、IBSでは、健常対照群に比較してUncetainの状況のほうがCertainの状況よりも予期の脳活動でSaliance Networkの一部が強く活動し、Hypervigilanceが見られた。また、Uncertainの状況で内臓感覚処理の脳活動がより強くなった。さらに、Unceratinな状況と全く刺激が来ない安全な状況を比較すると、対照健常群では、Uncertainな状況で見られる、島皮質の活動が、安全な状況では見られないのに対し、IBSでは、Uncertainな状況と変わらずに、安全な状況でも島皮質の強い活動がみられた。これはIBSでの刺激に対する心理的に過敏な反応性と、その内臓感覚処理の影響を示すと考えられた。さらに、ストレスホルモンの応答性と脳活動を比較し、対照健常群では内側前頭前野がストレスホルモン応答に抑制性のトツプダウン制御をしているのに対し、IBSではその関連が見られず、中枢性のストレス制御機構が変化していると推測された。国際共同施設でも同様のプロトコールで検討を行い、新たに米国の、機械学習による脳画像解析のエキスパートと共同研究を行い、異なる刺激部位(胃、大腸、外陰部、体性)による共通、あるいは異なる脳活動、疾患群に共通、あるいは異なる脳活動パターンを分析している。
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