研究課題/領域番号 |
26460901
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中馬越 清隆 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10436272)
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研究分担者 |
玉岡 晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50192183)
小金澤 禎史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80431691)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 認知症 / 前庭刺激 / 追従眼球障害 |
研究実績の概要 |
(目的)アルツハイマー病(AD)や前頭側頭葉変性症(FTD)のバランス障害に視覚による前庭調節機構の障害が大きく寄与していることを我々は報告した(Nakamagoe et al. 2015, 2016)。また温度眼振のvisual suppressionの抑制率がADやFTDのバランス障害の重要なパラメータであることも併せて報告した。 今回の研究では末梢前庭への刺激が複数の大脳の前庭関連部位を賦活化することを利用し、ADなどの認知症患者が合併するバランス障害を評価し、前庭を反復刺激することによる高次機能やバランス維持への効果を検証する。 (方法)AD患者を前庭刺激群と非刺激群の2群に分け、前庭刺激群では2週間に1度のカロリックによる前庭刺激を半年間実施した。両群の6ヶ月後の認知症進行とバランス障害の変化を各パラメータで群間比較検討した。電気眼振図検査下で追従眼球運動や温度眼振検査を実施し、高次機能検査や他覚的に前庭バランス障害を評価するための温度眼振のvisual suppressionの抑制率(SR)の変化と追従眼球運動の代償性サッカードを用いて6ヶ月の変化を追跡した。 (結果)認知症の進行は両群とも6か月で有意な進行を認めなかった。前庭刺激群で足踏み検査での偏倚角度とSRは前庭刺激群で改善の傾向を認めた。また前庭刺激群では代償性サッカードのpursuitにおける頻度が刺激により増加していた。 (考察)前庭刺激はADの前庭中枢の神経回路障害に対し影響を与えることが示唆された。つまり前庭反復刺激により代償機能を賦活させ、バランス維持効果が期待される。前庭刺激群及び非刺激群ともに症例数が少ないことから比較解析が不十分なことが限界である。さらに症例数を増やし検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者登録実施し、ランダムに前庭刺激群及び非前庭刺激群を割り付けして研究を進めている。登録後の脱落やアルツハイマー病患者の新規登録者が不足しており、予定症例数へ到達していないため、継続して募集を行う必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
認知症を代表するAD患者のバランス障害の経過を引き続き観察し、認知症の進行に対し前庭刺激による前庭バランス障害の進行抑制効果を継続して検証する。矩形波異常眼球運動がADにおいて健常者と比較して有意に出現することが現在までの成果で判明したため、これをバランス障害を他覚的に評価するためののパラメータとして利用が可能かについても今後検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
認知症の研究協力者を引き続き募集しており、研究協力者に対し前庭刺激を予定しており、謝金を確保するためである。また今後、研究成果を国際学会で発表報告する予定であるためである。
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次年度使用額の使用計画 |
インフォームドコンセントが得られた協力者に対し、前庭刺激1回5000円の謝金を支払う。6ヶ月12回刺激を予定している。検査補助者に時給800円(週7時間勤務)を支払う予定。また2017年世界神経学会など国際学会で成果を発表予定とする。
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