本研究では、PTAP(Pediatric Triage and Action Program)という名の初期診療に関わる非小児科医向けのシミュレーションプログラムを作成した。小児のシミュレーションとしてはAHA(American Heart Association)が提供しているPALSやPEARSがよく知られている。これらのプログラムとPTAPの違いとしては、①心肺蘇生やショックなど重症疾患の初期対応・治療の学習に特化せず、一次や二次救急で遭遇する頻度が高い疾患への初期対応を中心に学習していること。②設定が救命センターよりはプライマリケアで行える医療水準を想定していること。③帰宅可能なシナリオではホームケアを伝え、小児科医への紹介が必要なシナリオでは短時間のケースプレゼンテーションを行っている。これらの3点が他のプログラムとの大きな違いである。平成26年度から28年度の間で合計46回のプログラム開催を行った。受講生の内訳としては医師が全体の66%を占めていたが、続いて看護師が31%を占めていた。近年では、薬剤師や救急隊なども増加傾向にあり、本プログラムを通じて多職種連携教育(IPE)の場を提供している。また、参加者へのインタビューからIPEのひとつの土台となるプログラムとなり得ることがわかった。 同時に本プリグラムに関わるファシリテーターに必要な能力についても同定することができ、ファシリテーター養成プログラムの開発への準備も整った。本プログラムのファシリテーター養成プログラムの開発・評価・運営に関しては引き続き今後の課題となっている。
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