【研究目的】 癌の治療は、標的分子治療薬の開発・進展と共に、癌再発や転移が引き起こされ、薬物効果の減弱性や副作用の問題を引き起こしている。新たな抗癌剤の期待は、癌細胞への標的と共に腫瘍環境、特にTumor-Associated Macrophage (TAM)中のM2型Macrophageの活性化や分化に対する制御化合物の探索・開発が必要である。本研究では、伝統薬物から有効成分の探索、類似化合物を合成し、これら化合物の抗腫瘍・抗転移効果およびM2型Macrophageの役割を明らかにし、リンパ管新生との関係による転移機構を明らかにする。 【研究概要】 1)ヒト単球細胞株(THP-1)をPhorbol Myristate Acetate (PMA)処理し、M0型Macrophageに分化後、IL-4およびIL-13刺激下でのM2型Macrophage分化過程におけるIL-10、MCP-1およびStat3蛋白質発現やリン酸化を伝統薬物成分で検討し、クマリン類、カルコン類およびスチルベン類に強い阻害作用を示した。 2)M2型Macrophage分化後に上記化合物を加え反応したMediumのヒトリンパ管内皮細胞によるリンパ管腔(リンパ管新生)の形成を検討し、スチルベン類に強い阻害作用を示した。 3)高転移腫瘍細胞株LM8をマウス背部に移植し、In Vitroで効果の認められた化合物を投与し、抗腫瘍・抗転移効果および体重測定や摂餌量を測定(副作用)した結果、副作用も無く、抗腫瘍・抗転移効果を認めた。更に、腫瘍組織へのTAMの発現低下やリンパ管新生が減少した。 これらの事実は、上記化合物群の抗腫瘍・抗転移効果は腫瘍細胞への直接作用と共に、M2型Macrophageの活性化や分化阻害を介したリンパ管新生阻害による腫瘍環境の制御によることを明らかにした。
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