研究課題/領域番号 |
26460909
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
清水 孝洋 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (00363276)
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研究分担者 |
清水 翔吾 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (90721853)
中村 久美子 高知大学, 教育研究部医療学系, 技術専門職員 (30398052)
田中 健二朗 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (30552260)
八幡 俊男 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (40380323)
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80380062)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳内大麻 / エンドカンナビノイド / CB受容体 / 脳内麻薬 / オピオイド / μ受容体 / 中枢性交感神経―副腎髄質系 / 高血圧症 |
研究実績の概要 |
ストレス反応に重要な役割を担う交感神経―副腎髄質系の過剰・異常賦活は、高血圧症等のストレス関連疾患を惹起する。これら疾患の根治には、交感神経―副腎髄質系賦活制御を担う、中枢レベル(特に脳)を標的とした治療戦略を考える必要がある。 これまでに代表者らは、脳内エンドカンナビノイド(脳内大麻)の2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)を用い、2-AGが中枢性交感神経―副腎髄質系賦活に対して二方向性の役割を有することを明らかにしてきた。すなわち、2-AGは脳内アラキドン酸前駆物質として本系賦活に対し促進性に関与する一方、脳内大麻として脳内カンナビノイドCB1受容体(いわゆる大麻受容体)を介し抑制性にも関与することを報告した。近年、大麻受容体とオピオイド受容体(脳内麻薬が作用する受容体)との間に機能的な相互作用が報告されている。そこで本研究では、中枢性の新規高血圧治療薬候補として、脳内大麻及び脳内麻薬を想定し、これら薬物が交感神経―副腎髄質系賦活および高血圧症モデルに及ぼす影響ならびにその脳内作用機序を明らかにする事を目的とした。 本年度はオピオイド受容体に着目し、ストレス関連神経ペプチドのボンベシン脳室内投与により誘発された交感神経―副腎髄質系賦活に対する本受容体の役割について、ラットモデルを用いて解析した。結果、各オピオイド受容体サブタイプ(μ/δ/κ/NOP)のうち、1:脳内μ受容体は中枢性交感神経―副腎髄質系賦活に対し抑制性に関与する事、及び、2:脳内δ、κおよびNOP受容体はむしろ中枢性交感神経―副腎髄質系賦活反応に関与する事を、各サブタイプ選択的な遮断薬を用いた実験から明らかにした。以上から、脳内麻薬がストレス関連疾患に対する新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に、前述のオピオイド受容体の検討に加えて、CB受容体およびオピオイド受容体に作用する薬物群の中枢性投与が高血圧自然発症ラット(SHR)の高血圧病態に及ぼす影響についても検討する計画であったが、現状SHRの実験結果については予備的なデータしか得られておらず、報告できるレベルには至っていない。よって、現在までの達成度は約50%と考えており、上記の様に評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究方法1:ウレタン麻酔下のSHRおよび対照ラット(WKY)の側脳室へCB1受容体およびμ受容体に対する刺激薬を投与する。投与後、大腿動脈へ挿入したカテーテルを介して血圧及び心拍数の変動をモニターする。また経時的に動脈血を採血し、血中のカテコールアミン(交感神経―副腎髄質系賦活の指標)量もあわせて測定する。 計画1.CB1受容体およびμ受容体刺激薬がSHRの高血圧に及ぼす影響:両刺激薬の脳室内投与がSHRの高血圧病態を軽減するか検討する。これまで、脳内の両受容体がいずれも交感神経―副腎髄質系賦活を抑制性に制御する事を明らかにしているので、両薬物とも高血圧軽減作用を示すものと予想している。あわせて、両薬物がWKYでは血圧に有意な影響を及ぼさない事を確認し、病態時(交感神経―副腎髄質系の異常亢進時)にのみ作用を示すことを確認する。 研究方法2:ウレタン麻酔下の正常血圧ラットを実験に用いる。予め側脳室へCB1受容体刺激薬とμ受容体刺激薬または遮断薬を前投与した上で、ボンベシンを脳室内投与する。その後経時的に動脈血を採血し、血中のカテコールアミン量を測定する。 計画2.これまでCB1受容体を介した生理反応においてオピオイド受容体がCB1受容体の下流で機能している可能性が示唆されている。そこで交感神経―副腎髄質系賦活に対する脳内CB1受容体の抑制作用にμ受容体刺激薬または遮断薬が及ぼす影響を検討する。おそらくCB1受容体刺激薬の作用が、μ受容体刺激薬存在下で増強される一方、μ受容体遮断薬存在下で抑制されるものと予想している。 研究遂行の課題と対策:SHRを用いた実験は週令を揃えるのに時間を要するため、データ収集のスピードに難がある。そこで正常血圧動物を用いた、交感神経―副腎髄質系賦活制御機構の解析実験(上記計画2)を平行して進めることで、ある程度の成果を得られる様にしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の消耗品購入の際、丁度メーカーが割引キャンペーンを実施していた。当初の予算は定価に基づいて作成していたため、キャンペーンを利用できたことで、割引された分の研究費が浮く形となった。
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次年度使用額の使用計画 |
上述した研究の遅れを取り戻すべく、消耗品(動物、投与薬物など)の購入に充て、研究推進のペースアップを図る。また割引キャンペーン等を積極的に活用し、できるだけコストパフォーマンス良く研究を推進する。
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