研究課題/領域番号 |
26460910
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河合 啓介 九州大学, 大学病院, 講師 (80325521)
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研究分担者 |
田中 一成 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (20179740)
須藤 信行 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60304812)
久保 千春 九州大学, その他部局等, その他 (80117100) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Anorexia nervosa / Nutrition / Ghrelin / Fatty Acids / Default Mode Network / 心肺運動負荷試験 |
研究実績の概要 |
神経性やせ症(anorexia nervosa:以下AN)の病態に関して栄養学と脳科学研究を組み合わせて低栄養状態を中心に病態の解明を試みるのが本研究の目的である。 1)AN患者に心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary Exercise Training:CPX)を用いて運動耐容能を客観的に評価した。CPXは連続呼気ガス分析装置を用いた。運動負荷にはエルゴメータを使用した。運動耐容能の指標は嫌気性代謝閾値(Anaerobic Threshold:AT)とし、ATに達した時点での酸素消費量(メッツ)を求めたこれまで経験的に運用されたいた指標とほぼ一致する結果であった。 2)AN患者に中鎖脂肪酸を経口投与して、血液中の血中グレリン濃度が活性化されることを26年に報告した。27年はNPYもさらに上昇していることを証明した。グレリン、NPYともに食欲促進物質である。中鎖脂肪酸の臨床応用が期待される結果であった。 3)ANの栄養療法前後での核磁気共鳴画像を用いた安静時Default Mode Networkを検討した。後頭部帯状皮質と内側前皮質の活動性の亢進が明らかになった。これはANの内省の乏しさや自己のふりかえりの苦手な部分に関連している部位を表出していることが推察される。 4)神経性やせ症の脂肪酸代謝に関する研究:ANには極長鎖脂肪酸の代謝異常があることを明らかにした。昨年度原著論文を欧文誌に投稿し、現在修正中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な進捗は、脳科学研究と心配負荷試験研究である。 脳科学研究: AN患者18人と健常者18人について安静時の機能的MRIを測定。AN患者については入院の前後での変化を調べた。AN患者においては安静時の脳機能に低下がみられ、治療後は正常化傾向が認められた。さらに治療前のAN患者の脳機能低下は無力感や完全主義などの不適切な思考に関係していることが明らかになった。 第20回日本心療内科学会,盛岡,2015年11月では神経性やせ症の治療前後における安静時脳機能の変化にて優秀ポスター賞を受賞した。 中鎖脂肪酸経口投与によるグレリン上昇の研究については、論文を執筆中である。投稿が遅れた理由として、グレリンの上昇だけではなく、その上流にあるNPYの上昇を今年度、確認したためである。研究論文の完成は遅くなったが、より有意義な研究結果をえることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度より開始した心肺運動負荷試験については、28年度中に症例数を増加させ、論文化する予定である。 グレリン経口投与、脂質代謝研究(欧州静脈経腸栄養学会誌に投稿)は論文の執筆中である。28年度は当研究の最終年度であるため論文の学会発表と執筆が中心になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
翌年度の新たなデータ保存用記録媒体用の物品費として繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
データ保存用の記録媒体用の物品費として2,297円を使用する予定。
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