研究課題/領域番号 |
26460911
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細井 昌子 九州大学, 大学病院, 講師 (80380400)
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研究分担者 |
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 睡眠障害 / 養育スタイル / 過干渉 / ケア / 久山町 / 疫学 / 一般住民 / 慢性疼痛 |
研究実績の概要 |
睡眠障害は死亡率の増加や合併症、生産性の低下や事故の増加と関連し、慢性疾患を増悪させる。幼少期は睡眠サイクルが形成される重要な時期であり、睡眠習慣や睡眠脳波に関連するという報告がある。また、幼少期から青年期は睡眠障害の要因のひとつであるストレス脆弱性を規定する重要な時期とされている。Parental Bonding Instrument (PBI)質問紙で評価した幼少期の親の養育スタイルであるケアの欠如や過干渉が成人後の様々な心身の疾患(うつ病、強迫性障害、自殺、摂食障害、炎症性腸疾患、慢性疼痛など)に関連すると報告されているが、幼少期の養育スタイルと成人後の睡眠障害の関連を研究した報告はほとんどない。 本研究では一般住民における幼少期(16歳まで)の親の養育スタイル、特にケアの欠如や過干渉と成人後(40歳以降)の睡眠障害の関連について明らかにするため、2011年に福岡県久山町で健診を受けた一般住民702名(男性265名、女性437名)(40歳~96歳)の質問紙調査、問診、身体計測、血液検査を解析した。その結果、睡眠障害の割合は29%で、男女別に見た養育スコアでは男女差があった。同性親子(父親-男性、母親-女性)について解析したところ、高ケア-低過干渉群に比べ、高ケア-高過干渉群、低ケア-高過干渉が睡眠障害に有意に関連していた。身体的因子を調整後も同様の関連が残った。うつ症状を調整すると睡眠障害に対する低ケア-高過干渉の関連は弱まったが、高ケア-高過干渉の関連はオッズ比で1.83(95% CI 1.03-3.26, P = 0.04)であり有意として残った。 この結果より、幼少期に両親のケアが低く過干渉な養育を受けた人は成人後に睡眠障害を有する割合が高いことが明らかとなった。また、養育スタイルの睡眠障害への影響は男女差があり、同性の親の過干渉の影響が強いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般住民において、養育スタイルが睡眠障害や慢性疼痛の有症率に影響しているという結果については進展しており、学会発表あるいは論文発表を予定している。自律神経機能や失体感傾向の慢性疾患への影響については、一般住民における解析の前に、九州大学病院心療内科の慢性疼痛患者においての解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
一般住民における自律神経機能と失体感症の慢性疾患への影響を調べる数百人以上を対象とした久山町疫学研究を新たに行う前に、調査対象の重点化のために血液検査などを含めた予備研究を行うことが効率的であると考えられる。そのため、九州大学病院心療内科を受診する慢性疼痛患者群と健常群(各群40-100名程度)を比較する症例対照研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
久山町検診での疫学研究を平成26年度に行う予定であったが、過去の久山町疫学データの解析を26年度に行い、さらに健常人と患者群の症例対照研究を先行させて、大量データ取得が見込める健診での研究を行うという順番で研究を行う方針となった。そのため、大量データ取得の際に必要な人権費を平成26年度に使用せずに先延ばしをする必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、健常群において、自律神経機能検査と血液検査や質問紙調査に関する費用が必要であり、そのための費用として使用する予定である。
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