研究実績の概要 |
【目的】幼少期に受けたケアが少なく過干渉な養育スタイルは成人後の心身の疾患との関連が報告されているが,慢性疼痛との関連を検討した報告は少ない.本研究では,慢性疼痛を主訴に心療内科を受診した患者および一般住民を対象に被養育体験と慢性疼痛の重症度の関連を検討した. 【方法】慢性疼痛を主訴に心療内科を受診した外来患者群(外来群:n=50),同入院患者群(入院群:n=50),福岡県久山町の健診を受診した一般住民で,痛みのない群(一般健常群:n=100),慢性疼痛を有する群(一般疼痛群:n=100) の性,年齢をマッチさせた4群(平均年齢±SD:50.8±8.9)を対象に質問紙検査を行った.養育スタイルはParental Bonding Instrumentを用いて評価し,ケアおよび過干渉のスコアを基準値で高低に分類した.慢性疼痛は3ヶ月以上有する痛みと定義し,疼痛強度はVisual analogue scale(VAS)で評価した.各群の低ケア・高過干渉の養育パターンの割合をコンディショナルロジスティック回帰分析で比較した. 【結果】疼痛強度のVASの中央値は,一般健常群 0 mm,一般疼痛群37 mm, 外来群62 mm, 入院群75 mmと上昇し(傾向性P値<0.001),この順に疼痛の程度が上昇していた.低ケア・高過干渉パターンを有するオッズ比(多変量調整後)は,一般健常群に比べ一般疼痛群で父親1.76(95%CI 0.85-3.65)・母親1.78(0.83-3.86),外来群で父親2.87(1.27-6.49)・母親2.99(1.27-7.02),入院群で父親4.12(1.88-9.05)・母親3.04(1.30-7.12)であった. 【結論】ケアが少なく過干渉な被養育体験は成人後の慢性疼痛の重症度に関連することが示唆された.
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