研究課題
縮瞳は瞳眼神経副核由来の副交感神経、散瞳は毛様脊髄中枢由来の交感神経によりおこる。自律神経は臓器特異性があり、等尺運動負荷時の血管収縮には副腎からのカテコラミンも関与する。健常者群(NT群)と交感神経への影響が少ないとされるアムロジピン投与群(AZ群)、交感神経の抑制作用を有するアゼルニジピン投与群(AZ群)において等尺運動負荷による血圧、自律神経の反応から薬剤間の差を明らかにした。AZ群(n=23)とAM群(n=20)の3群について、ハンドグリップ試験を行い、その前後で、血圧、瞳孔機能検査を測定した。ハンドグリップ負荷前の収縮期血圧(SBP)はAZ群136.5±11.6mmHg、AM群133.3±11.2mmHg、負荷後の血圧は、AZ群141.9±15.4mmHg、AM群144.6±12.9mmHgであり、AZ群の変動は有意でなかったがAM群は有意に上昇した。縮瞳速度(VC)は負荷前AZ群3.5±0.8ms、AM群3.5±1.2ms、負荷後AZ群3.5±0.9ms、AM群4.6±1.9msとAZ群では変化なく、AM群では有意に上昇した。散瞳速度(VD)は負荷前、AZ群1.6±0.4ms、AM群1.8±0.7ms、負荷後AZ群1.8±0.5ms、AM群2.7±1.0msでAZ群は変化なく、AM群では有意に上昇した。SBPの%変化とVCおよびVDの%変化は負の相関を示した。AM群、AZ群ではこれらの相関関係は消失したが、若年AM群に限定するとSBPの%変化とVDの%変化は正相関を示した。AZ群では年齢を限定しても相関関係はみられなかった。以上よりAZは高血圧における交感神経の亢進を抑制することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
非侵襲的に交感神経機能を測定する方法として、瞳孔機能検査を用いる方法を確立し、高齢者や高血圧患者においても安全に検査することが可能となった。高血圧の治療薬として、よく用いられるカルシウム拮抗薬のうち、交感神経機能を抑制するとされる薬剤が負荷時にどのように交感神経に関わるかを、3種類の薬剤の比較から明らかにすることができた。これらの結果から、カルシウム拮抗薬の特徴が明らかになるとともに、高血圧の病態と特徴、さらに降圧薬の反応を明らかにすることができたことからほぼ目標は達成された。
高齢者では、交感神経機能は低下することが知られているが、ストレス時の血圧の変動や日差変動はむしろ大きいことも知られている。そこで、高血圧患者について瞳孔機能検査からみた等尺運動負荷時の交感神経系の変化を年齢別に評価し、加齢に伴う血圧変動に交感神経・副腎系や血管の硬化がストレス時の血圧変動や血圧の日差変動にどのように関与しているかを明らかにする。同時に日差変動に対する降圧薬の影響を評価することで、交感神経抑制作用の有無がどのように血圧変動に影響するかを明らかにする。
昨年度は、解析に必要な例数の臨床研究を継続的に行っていたため、研究結果の解析及び研究成果の集約・発表に対しての経費が発生しなかった。とくに、対象となる複数の群の比較をするため、途中経過の解析や論文化が出来ないこともあり、次年度、使用額が発生した。
本年度は、臨床研究の継続し、解析に必要な例数を収集する事を継続する。さらに、解析可能例数となった群についてデーター解析を開始するとともに、論文化の作業を行うとととする。既に一部のデーターについては、論文を作成し投稿した。
すべて 2015
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