研究課題/領域番号 |
26460920
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮下 和季 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (50378759)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 内分泌学 / 抗加齢医学 / サルコペニア / グレリン / ミトコンドリア / エピゲノム / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
サルコペニアは身体能力低下を伴う筋肉量の減少と定義され、運動不足や加齢に伴いサルコペニアが進行すると、転倒・骨折が増加するのみならず、肥満・糖尿病などの生活習慣病ならびに心血管病の発症・進展につながる。サルコペニア治療において高たんぱく食が有用であり、筋肉量を増やして筋力を改善する効果が示されている。一方、申請者のグループではこれまでの検討で、高たんぱく食で活性化し筋肉量制御において重要な役割を果たす分子である哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)を、骨格筋において慢性的に活性化させると、筋肉量は増加するものの筋肉内のミトコンドリアが減少し、持久力と耐糖能が悪化することを見出した。また、慢性腎不全(CKD)に伴うサルコペニアの発症機構を解析し、CKDに伴うサルコペニアにおいては、筋肉量の減少が明らかとなるよりも早期の段階から、骨格筋のミトコンドリア量が減少すること(マイトペニア)を見出した。 そこでサルコペニアの身体能力改善には筋肉量を増加させるのみならず、ミトコンドリア量を増加させる治療が有用であると着想し、骨格筋における酸素利用促進作用が最近報告された消化管ホルモンであるグレリンを、CKDモデルマウスである5/6腎摘マウスに投与して、サルコペニアの改善を検討した。 1か月間のグレリン投与(0.1nmol/gBWを週3回腹腔内投与)により、5/6腎摘マウスのミトコンドリア量と筋肉量が増加し、筋力と持久力が有意に改善した。骨格筋におけるミトコンドリア生合成促進分子であるPGC-1αの発現は、5/6腎摘にてプロモーター領域のメチル化亢進を介して低下したが、グレリン投与によりメチル化レベルが低下し、PGC-1αの発現が回復した。 これらの結果よりグレリンは、筋肉量とミトコンドリア量の双方を増やすことで、CKDに伴うサルコペニアを効率よく改善すると示唆された (Endocrinology 156:3638, 2015)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化管ホルモングレリンのマイトペニア(ミトコンドリア減少)に対する有用性を明らかにし、論文発表を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究にて、身体能力改善におけるグレリンの有用性を見出したので、グレリンの臨床応用に向けた検討を優先して遂行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
直接経費の端数のため、69円の未使用金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度にあたるため、当初計画通り消耗品の購入等により全額使用する予定である。
|