研究実績の概要 |
本年度は、ミトコンドリアで作られるアミノ酸誘導体であるアミノレブリン酸(aminolevulinic acid, ALA)が、骨格筋ミトコンドリアに与える効果を検討した。ALAはミトコンドリア電子伝達系の電子担体であるヘムやシトクロムの原料となる重要分子で、加齢に伴うALA産生の低下が加齢性疾患の発症原因となる可能性が注目されている。我々は、C57bl6マウスに0.03%ALA含有飼料を8週齢から8週間与え、体重・随時血糖・乳酸値をフォローした。ALA投与マウスでは、摂餌量と体重が増加する傾向にあるにもかかわらず、随時血糖が低下した。呼気ガス分析ではALA投与により酸素消費量の増加と呼吸商の低下を認めた。ALA投与マウスでは骨格筋ミトコンドリアの増加と持久力・筋力の向上、さらには筋肉量の増加を認めた。骨格筋の定量的PCR法ではミトコンドリア活性化因子(PGC-1α, UCP3, ATPsyn, Cox4i1)の発現亢進、筋肉分解因子(Atrogin1, Murf1)の発現低下を認め、筋肉量制御の重要因子であるtarget of rapamycin complex-1 (TORC-1)が活性化していた。大腿四頭筋のメタボローム解析を行ったところ、TORC1を活性化し骨格筋量を増やす働きが知られている、ロイシンやイソロイシンなどの分枝鎖アミノ酸(branched-chain amino acid, BCAA)が増加しており、BCAAの分解酵素である分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素(branched-chain aminotransferase, BCAT)の発現は低下していた。以上の結果より、ALAは骨格筋ミトコンドリアを活性化するのみならず、BCATの発現抑制を介して骨格筋量を増加させることで、筋力・持久力を改善すると示唆された。さらにALAは、耐糖能の改善にも有効であった。
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