研究課題/領域番号 |
26460925
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
矢部 武士 摂南大学, 薬学部, 教授 (40239835)
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研究分担者 |
荒木 良太 摂南大学, 薬学部, 助教 (90710682)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 漢方薬 / 精神疾患 / 加味温胆湯 / 神経新生 |
研究実績の概要 |
昨年度の結果から、環境ストレス(傾斜ゲージストレス、汚物ゲージストレス、振盪ストレス)やコルチコステロンを負荷したマウスへの加味温胆湯の経口投与が、強制水泳試験におけるうつ様行動や海馬歯状回における神経新生の異常を改善することを明らかとした。今年度は、神経新生やうつとの関連性が示唆されている脳由来神経栄養因子(BDNF)のmRNA発現量を指標に加味温胆湯及び構成生薬の1つである遠志の作用解析を行った。また加味温胆湯と同様に遠志を構成生薬として含有する帰脾湯の作用も合わせて検討した。コルチコステロン(20 or 40 mg/kg)を2週間皮下投与したマウスでは、海馬におけるBDNF mRNA発現量の有意な減少が観察された。一方、加味温胆湯、帰脾湯、及び遠志エキスを経口投与したマウスにおいては、BDNF mRNA発現量は対照群と同等レベルまで回復した。また帰脾湯投与動物の海馬歯状回における神経新生を評価したところ、帰脾湯投与群においてコルチコステロンによる神経新生の低下が明らかに減弱された。一方、遠志エキスの投与は神経新生には影響を及ぼさなかった。また隔離飼育マウスで認められる多動反応に対して加味温胆湯の投与が改善効果を示したが、多動反応の発現に関連が深いと推測される背側縫線核のGABAB1a mRNAの発現には変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の検討から、神経新生促進作用、抗うつ様作用を加味温胆湯が有することを見いだしたが、これの制御への関連性が示唆されるBDNFの発現が加味温胆湯投与動物の海馬で増加していることを明らかに出来た。隔離動物を用いた解析では、加味温胆湯のエピジェネティクスへの作用を解析する予定であったが、GABAB1Aの発現に変化が認められなかったため、投与量、投与期間などを再考することにした。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に平成27年度の実験計画の延長線上の研究を行うが、エピジェネティクス制御に及ぼす漢方薬の作用解析に注力する。具体的には、海馬、視床下部、大脳皮質前頭前野、背側縫線核において、DNAメチル化酵素やヒストンアセチル化酵素などのエピジェネティクス関連分子の発現をreal-time PCR法、ウエスタンブロット法などにより網羅的に解析を行う。また、異常行動との関連性が指摘される遺伝子群のピロモーター領域を単離し、そのメチル化の度合をバイサルファイトシークエンス法により解析を行う。これらの解析を西洋薬の作用と比較することで、漢方薬と西洋薬の作用の差別化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
エピジェネティクス解析において期待していた結果が得られなかったため、シークエンス費用が想定額より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
投与量、投与期間などを変えてDNAメチル化解析を行い、その費用に充当する。
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