研究課題/領域番号 |
26460927
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研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
山本 直宗 藍野大学, 医療保健学部, 准教授 (00454546)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血糖制御モデル / クローズドループモデル / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
炭水化物、タンパク質、脂質の組成の異なる3種類の製剤投与下で連続血糖測定を行い血糖変動の評価を行った。血糖値は5分毎に72時間連続で測定を行い、血糖変動の差を評価した。また各時間帯による血糖変動の違いを評価するために3種類の製剤はランダマイズに投与開始した。 ①番目に糖質60% で液体、②番目に糖質60% で半固形、③番目に脂質55% で液体の栄養剤をランダマイズに1日に体重あたり24Kcal投与し、1回1時間、1日3回投与し、その間の72時間を5分ごと(毎)に連続血糖測定装置を用いて血糖測定を行った。同カロリーで同じ時間で投与下にも関わらず、驚くべきことに血糖変動は、糖質液体、糖質半固形、脂質液体で全く血糖変動は異なった。糖質液体では、食前は110mg/dL前後であったが、約2時間後には230mg/dLまで上昇し、その上昇率は2倍以上となり、他の栄養剤と比較して明らかな食後高血糖を認めた。特に血糖値が200mg/dL以上の高血糖の時間が約1時間持続し、Detrended fluctuatin analysis(DFA)を用いた解析では、他の製剤よりも有意に血糖変動の複雑性は低下しており、明らかにインスリンまたはグルカゴン依存による血糖制御の要素が大きく影響がでる。すなわち血糖制御のアルゴリズム作成には摂取栄養素の違いを考慮したうえでのモデル作成が必要である。また予想外に同じ栄養素の成分であっても朝食時と夕食時では血糖変動が異なり、時間栄養学的な要素の考慮が必要であると考えられる。今後、栄養素の種類、投与時間の違いを考慮した血糖予測アルゴリズムの策定を行っていく予定である。今回の結果は2014年糖尿病学会近畿地方会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画はほぼ順調に進んでいるが、一部血糖制御アルゴリズムの作成が遅れている。 理由としては、血糖変動の要素には、個人のばらつきのみではなく、投与する栄養素の種類、および投与時間という、外的要因を考慮する必要があると考えられる。今回の結果で、同じ総カロリー、投与時間であっても、異なる栄養素の投与によって(炭水化物60%、脂質60%)の間で血糖変動が異なることは既報にもあったが、朝食時と夕食時に同じカロリー、同じ栄養成分を投与して血糖変動が大きく変わることは過去の論文でも報告されておらず、血糖制御のアルゴリズム作成に当たっては、時間帯によるアルゴリズムの変更を考慮しなければならないことが原因である。また、近年、北村らにより、血糖制御因子の一つであり、私たちの制御モデルにおいても説明因子の一つであるグルカゴンの測定キットが既存の物では誠意閣でないことが報告されており、正確な制御モデル作成に当たっては、グルカゴン測定値の見直しが必要であることが判明したためである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、時間帯別のクローズドループモデルによる血糖制御モデルの作成とグルカゴンの再測定を行いモデルの精度を上げることが今後の最重要課題である。時間別の対策としてはインスリン感受性「Is」という新しい説明因子を時間別に加え、制御モデルの精度を上げる予定にしていると考えられる。また現在、7例での検討であるので、引き続き症例の蓄積を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
血糖制御アルゴリズムの作成にあたり、新しい時間的要素の考慮およびグルカゴンの測定をし直す必要があり、本年度内にクローズドループのアルゴリズムの作成が行えなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、新しい時間的要素の考慮およびグルカゴンの新規キットによる測定をし直し、クローズドループの新規作成を本年度以内に行う予定である。
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