研究課題/領域番号 |
26460928
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
青木 元邦 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (00346214)
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研究分担者 |
中神 啓徳 大阪大学, その他の研究科, 教授 (20325369)
川畑 浩久 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 助教 (30454680)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アンジオテンシンII / アンジョテンシン受容体拮抗薬 / 軟骨細胞 |
研究実績の概要 |
高血圧調節機構レニンーアンジオテンシン(RA)系は、様々な臓器・細胞に対する機能が報告されており、近年では骨・軟骨への影響も示唆されているが、生体内軟骨に対するAng IIの影響は未だ明らかでない。本研究では、今年度、マウス肋骨骨折モデルを用いて、Ang IIの浸透圧ポンプによる持続投与が、骨折修復における仮骨形成に及ぼす影響を検討した。まず、マウス腓骨の骨端線を用いて、AT1Rに対する免疫染色を行ったところ、増殖軟骨細胞・肥大軟骨細胞ともにAT1Rの発現が確認できた。Ang IIの持続投与により、仮骨エリアの肥大軟骨細胞数及び総面積は有意に増大した。さらに軟骨細胞の分化マーカーである転写因子SOX9, Runx2のmRNA発現の有意な亢進もreal time PCR法にて確認された。さらに肥大軟骨細胞から分泌されるマーカーであるType 10 Collagen, MMP-13, Indian hedgehogも発現の有意な亢進が確認された。Ang IIと同時に浸透圧ポンプにてアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタンを投与したところ、軟骨細胞の分化マーカーの発現亢進・軟骨分化促進による仮骨増大は抑制された。一方で、RA系に影響しない降圧剤ヒドララジンの投与では分化抑制は確認できなかった。Ang II投与による軟骨細胞分化は血圧上昇によるものではなく、血圧と独立したAng IIによるAT1Rの活性化を介する直接的作用であると考えられた。 さらに、骨折修復過程では、仮骨において肥大軟骨細胞がアポトーシスを起こし、内軟骨性骨化が誘導されるが、Tunnel染色にてAng II投与にて肥大軟骨細胞のアポトーシスは抑制されていた。オルメサルタン投与にてこの抑制は阻害され、ヒドララジン投与では影響しなかったことから、Ang IIによるアポトーシス抑制作用もAng IIによるAT1R活性化を介するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨折モデルを用いた検討で、Ang IIの軟膏細胞への影響はおおむね明らかにできた。しかし、培養細胞を用いた検討が未だ不十分であり、現在早急に実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
培養軟骨細胞を用いて、Ang IIの軟骨分化促進作用・軟骨アポトーシス抑制作用を明らかにし、仮説の補強を行う。さらにラット変形性膝関節症(OA)モデルを作成し、ARB投与が病態進行・軟骨変性に及ぼす影響を検証する。骨折モデル同様、SOX9, Runx2, Type 10 Collagen, MMP-13, Indian hedgehogなどのマーカーを用いて検討し、ARBによるレニンーアンジオテンシン系抑制がこれら分子発現を抑制して軟骨変性進展を阻害できるかを検証する。同時に炎症機転にも注目してARBによる抗炎症作用、NFkBの転写活性などにも焦点をあて、ARBのOAに及ぼす影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラット数が予定より少なく解析可能であったため、剰余が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞実験にかかる消耗品費あるいはモデル動物購入費として有効利用する。
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