研究課題/領域番号 |
26460929
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
鍋島 茂樹 福岡大学, 医学部, 教授 (50304796)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 麻黄湯 / インフルエンザ / オートファジー / エンドゾーム / アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究計画では、漢方薬の麻黄湯が細胞のオートファジーに与える影響を分子レベルで探索し、麻黄湯による宿主のオートがジー機能強化を介した、ウイルスに対する感染防御メカニズムを明らかにすることを目的とした。これまで、インフルエンザウイルスの感染によりオートファジーの成熟が阻害されていること、麻黄湯の添加によりオートファジーの成熟が正常化することがわかっていた。 さらにインフルエンザウイルスは、宿主の細胞にアポトーシスを誘導することがわかったが(DNAラダー形成、LDHアッセイ)、麻黄湯はアポトーシスを阻害し細胞を生存させる作用を持つことがわかった。このとき、オートファジーが関与するかどうかを調べるため、オートファゴゾームを欠損したMEF細胞をもちいて、同様の感染実験を行うと、麻黄湯によるアポトーシス阻害作用はキャンセルされ、感染細胞はアポトーシスをおこすことが確かめられた。オートファジーは、一般的にアポトーシスを阻害する作用を持つが、麻黄湯はオートファジー能を強化し、細胞のアポトーシスを防いでいることがわかった。 前年度の研究実績の報告にも書いたが、麻黄湯がインフルエンザの増殖阻害作用を発揮するのはインフルエンザの生活環のごく初期においておこることがわかってきた。インフルエンザは細胞に感染するとエンドゾームの酸性化を利用して脱核し、増殖サイクルに入るが、麻黄湯はエンドゾームの酸性化を抑制し、ウイルスの脱核を阻害していることが確かめられた。また、麻黄湯を作用させると、エンドゾーム内に長時間ウイルスが残っていることが、蛍光顕微鏡により確かめられた。これは、おそらくエンドゾーム膜に存在するVacuolar type ATPaseの活性を阻害しているためと考えられるが、その証明は今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・エンドゾーム膜に存在するVacuolar type ATPaseの活を測定することが技術的に難しい。 ・オートファジー自体が、どのようにアポトーシスを抑制しているかの証明が難航している。 ・実験助手の退職
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今後の研究の推進方策 |
・オートファジーがアポトーシスに与える影響を解析する。 ・インフルエンザにおいて、宿主にダメージを与える炎症性サイトカインの過剰産生が、麻黄湯により抑制することができるか、またそのメカニズムを男策する。 ・麻黄湯の作用により、エンドゾーム内から細胞質に脱核することができないインフルエンザウイルスが、その後、どの様に処理されるか。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が思うように進まなかったことによる試薬等の物品費および、人件費の余剰がでたため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度に物品費とくに試薬代として使用を予定している。
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