研究課題/領域番号 |
26460930
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
光永 修一 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 研究員 (20466197)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵がん / 悪液質 / 神経浸潤 / 疼痛 / IL-6 / マウスモデル |
研究実績の概要 |
本研究は、膵癌神経浸潤部では腫瘍細胞でのIL-6発現が亢進し、腫瘍細胞由来IL-6が疼痛および悪液質の原因となることを立証するために計画された。本年度は、膵癌神経浸潤マウスモデルにおいて腫瘍細胞IL-6発現上昇時期と神経組織の応答や悪液質発症時期との時系列的な関係を検討し、腫瘍細胞由来IL-6抑制による神経浸潤マウスモデルでの神経組織の応答や悪液質に対する作用を確認するために必要な、IL-6 産生抑制膵癌細胞株を作製することを予定した。 膵癌神経浸潤マウスモデルは、ヒト膵癌細胞株Capan-1を、SCIDマウスの座骨神経内に直接注入することで作製されるが、皮下腫瘍モデルと比較して、作製から4週後より体重減少および異痛が明瞭となることがわかった。腫瘍細胞から産生されるヒトIL-6は、神経浸潤モデルでの腫瘍細胞mRNA発現およびマウス血中濃度において、皮下腫瘍と比較して高くなる。また、作製から6週後には、ヒトIL-6血中濃度上昇・体重減少・異痛は更に明瞭となる。ヒトIL-6 shRNA配列を3種類選び、Gateway法にてレンチウイルスにクローニングした組み替えレンチウイルスをそれぞれヒトfibroblastに感染させ、control shRNA配列を組み込んだレンチウイルスを感染させたヒトfibroblastを対象にIL-6 mRNA抑制効率検討し、最も抑制効果の高いヒトIL-6 shRNA(抑制割合は72%)を選択した。Control shRNAおよびIL-6 shRNAをCapan-1に組み込み、single cellからクローン細胞を作製した(control shRNA 9クローン、IL-6 shRNA 6クローン)。Parent wild-type Capan-1と比較して、細胞増殖の対数増殖期がほぼ同一で、control shRNAであればIL-6 mRNA発現が明瞭に低下しておらず、IL-6 shRNAであればIL-6 mRNA発現が明瞭に低下したクローンを選択した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経浸潤マウスモデルにおける、体重減少および疼痛の再現に成功した。また、腫瘍から産生されるIL-6量が、体重減少や疼痛が増悪する時期に併せて増大していくことを明らかにした。腫瘍由来IL-6産生を阻害できるIL-6 shRNA導入膵癌細胞株およびそのクローンも順調に作製できたため、本年度以降の研究実施は遅滞なく実施できると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞由来IL-6抑制による神経浸潤マウスモデルでの神経組織の応答や悪液質・疼痛に対する作用を確認する。また、本研究は臨床上問題となっている悪液質を扱うため、基礎研究の結果が臨床へのトランスレーションが可能であるか検討することは重要である。従って、進行膵がん患者における高度神経浸潤とIL-6濃度および疼痛や悪液質との関連を検討する。
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