研究課題/領域番号 |
26460932
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩切 大 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10307853)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | EBV / EBER / 胃がん / エクソソーム / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
本研究ではまず、EBウイルス(EBV)感染胃がん細胞により放出されるエクソソームの発がんにおける役割について、特にその中に含まれるEBVのnon-coding RNAであるEBERの活性に関しての検証をおこなっている。昨年までの研究で、樹立した種々のEBV感染胃がん細胞の培養上清からエクソソームを抽出、さらにRNAを抽出してEBERの検出を試み、用いた全てのEBV感染胃がん細胞由来のエクソソームでEBERが存在していること、EBERがエクソソーム分泌依存的に放出されていること、さらにエクソソームを加えたレシピエント細胞内にはEBERが取り込まれていることを明らかにた。一方エクソソーム内のEBERがレシピエント細胞において示す活性に関して検証し、EBERを含んだエクソソームは、それを取り込んだレシピエント細胞からのⅠ型インターフェロン(IFN)産生を誘導すること、それはEBERによるTLR3シグナルの活性化を介しているものであることがわかった。さらにその後の検証で、EBERが含まれているエクソソームはレシピエント細胞の増殖を促進することが明らかになった。以上の結果から、EBV感染胃がん細胞においてはエクソソームの取り込みによるTLR3シグナルの恒常的活性化が起こっていて、その結果、細胞増殖が促進されるということが示唆された。さらにこのエクソソーム取り込みによる細胞増殖促進機構について、詳細な解析を行っている。一方、EBER取り込みにより惹起されるIFNシグナルに関して、エフェクター分子であるIRFの発現に関してmRNAアレイなどで検証した結果、EBV感染胃がん細胞では、非感染細胞に比較してIRF6の発現が抑制されていることがわかった。このIRF6抑制がEBVによる胃発がんにどのように関わっているかについて今後検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々のEBV感染胃がん細胞において、エクソソーム依存的に放出されたEBERがレシピエント細胞のTLR3シグナルを活性化すること、さらに細胞増殖を促進することが明らかになった。またEBV陽性胃がん細胞特異的にIFNシグナルが制御されていることを示唆する結果が得られた。以上の成果は、EBV陽性胃がん細胞特異的な細胞増殖促進機構を示唆するものと考えられ、それを標的とした細胞増殖の制御法の解明にもつながるものと期待される。そのため研究は概ね計画通りに進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
EBERを含んだエクソソームによるレシピエント細胞の増殖促進機構に焦点を当て、EBV感染胃がん細胞におけるTLR3シグナルやIFNシグナルとの関連を中心に解析をさらに進める。そしてEBV感染胃がん細胞特異的な増殖機構の詳細を明らかにし、それを標的とした増殖制御法を模索する。またエクソソーム内のmiRNAの機能について詳細に検討し、それらがEBVによる発がんとどのように関わっているかについて明らかにしていく。さらに、EBER発現の有無がエクソソームmiRNAの存在にどう影響するか等について、EBER欠損ウイルス感染細胞を用いた検証もおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年8月に研究機関を移動したため、実験を中止せざるを得ない時期があった。加えて機関移動に伴う科研費の移管に時間を要し、使用可能となる時期を待たねばならなかったこともあり、結果当該研究費の使用再開が当初の予定よりも遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度はすでに使用可能となっているため、実験計画に基づき、速やかに使用していく予定である。
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