研究課題
本研究は食道扁平上皮癌三次元培養モデルを用いて癌幹細胞と線維芽細胞により形成される癌間質の相互作用を解析し、癌幹細胞ニッチ形成に重要な因子を同定することを目的に遂行される。生体内の腫瘍の性質を維持したまま腫瘍細胞の培養が可能である食道癌三次元培養法を用いることで、癌幹細胞ニッチの癌細胞と線維芽細胞を分離した網羅的な解析が容易となる。さらに臨床検体から分離された腫瘍細胞も三次元培養法を用いることで培養可能であり、より実臨床に則した癌幹細胞ニッチの解析が可能である。本研究による食道扁平上皮癌の癌幹細胞ニッチ解析は、癌幹細胞を標的とした新たな治療法開発の萌芽となる。平成26年度は下記の研究を遂行した。・複数の線維芽細胞を用いて食道扁平上皮癌3次元培養実験を行った。線維芽細胞の種類により食道扁平上皮癌のマトリックスへの浸潤の程度は異なった。癌細胞に高度な浸潤を誘発する線維芽細胞、浸潤を誘発しない線維芽細胞を同定した。・食道扁平上皮癌細胞を用いて3次元培養実験を行い、癌細胞のマトリックスへの浸潤部において食道扁平上皮癌の癌幹細胞マーカーであるCD44が強く発現していることを確認した。・CD44の発現の高い食道扁平上皮癌細胞とCD44の発現の低い食道扁平上皮癌細胞を用いて、次世代シーケンサを用いたRNAシーケンシングを行った。CD44の発現の高い癌細胞において有意に発現上昇、発現低下している候補遺伝子を同定した。
3: やや遅れている
食道扁平上皮癌三次元培養を応用し、概ね計画通りに研究は遂行されている。次世代シーケンサを用いたRNAシーケンシングにより癌幹細胞ニッチ形成に重要であることが予想される候補遺伝子が同定された。サイトカインアレイが未施行のため、やや遅れていると評価した。
・サイトカインアレイを用いて、癌幹細胞ニッチ形成に重要な候補因子を探索する。・ESCC癌幹細胞ニッチの形成に重要な線維芽細胞側の因子(A)および線維芽細胞を活性化させるESCC側の因子(B)を検証する。因子(A)に対するshRNA、阻害剤、中和抗体を用いて三次元培養を行い、培養中のCD24Low/CD44High細胞の割合をFACSにより解析する。逆に、因子(B)に対するshRNA、阻害剤、中和抗体を用いて三次元培養を行い、線維芽細胞の活性をαSMA、FAPの発現による評価する(qPCR、ウェスタンブロット、免疫組織染色)。・有効性を確認した阻害剤のin vivoでの効果を、マウス腫瘍移植モデルを用いて検証する。
消耗品購入額が当初予算よりも安価であったため1万7千580円の次年度使用額が生じた。
消耗品(細胞培養試薬)に使用する計画である。
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