研究課題
【EGFR阻害剤がESCC癌幹細胞ニッチに及ぼす影響】食道扁平上皮癌(ESCC)癌幹細胞の増幅においてEMT(上皮間葉移行:EMT)が重要であること、EMTにおいてはEGFR(epidermal growth factor receptor)経路が重要であることを我々は報告してきた。3次元培養においてEGFR阻害剤を用いると腫瘍細胞のマトリックス内への浸潤が抑制され、ESCCにおいて癌幹細胞ニッチを形成していると思われる腫瘍浸潤部が減少した。この3次元培養サンプルから腫瘍細胞を分離しFACSで解析すると、ESCC癌幹細胞であるCD24Low/CD44High細胞は有意に減少していた。免疫染色においても、腫瘍浸潤部に多く認められるCD44発現の高い腫瘍細胞はEGFR阻害剤により有意に抑制されていた。【FGFR阻害剤によるESCC癌幹細胞を標的とした新規治療法の可能性】サイトカインアレイ、DNAマイクロアレイの結果より、FGF2 (fibroblast growth factor-2)が食道扁平上皮癌(ESCC)の癌幹細胞の制御において重要であることを見出した。ESCC癌幹細胞であるCD24Los/CD44High細胞はFGF2の添加により増幅され、逆にFGFRの阻害剤を用いることで有意に抑制された。3次元培養を用いた検討では、FGFR阻害剤を用いることで腫瘍細胞のマトリックス内への浸潤が抑制され、癌幹細胞ニッチを形成していると思われる腫瘍浸潤部が減少した。これらの結果から、腫瘍浸潤部においてESCC癌幹細胞ニッチが形成されており、EGFR阻害剤、FGFR阻害剤はESCC癌幹細胞を標的とした新たな治療法となり得る可能性が期待される。
3: やや遅れている
EGFR阻害剤、FGFR阻害剤が食道扁平上皮癌における癌幹細胞を標的とした治療法になり得る可能性を見出しており、本研究は順調に進展しているが、平成27年度は動物実験に着手できなかったため「やや遅れている」と評価した。
EGFR阻害剤、FGFR阻害剤のin vivoでの効果を、マウス腫瘍移植モデルを用いて検証する。ヌードマウスにESCC細胞を皮下移植し、移植後2週目より阻害剤の投与を開始する。経時的に腫瘍サイズを測定し、腫瘍移植後6~8週目にマウスをと殺する。腫瘍細胞を分離しCD24Low/CD44High細胞の割合をFACSにより測定、また、αSMAの免疫組織染色により線維芽細胞の活性を評価する。同様に臨床でESCCに対して使用されている抗癌剤(5FU、CDDP)の併用投与を行う。阻害剤によりESCC癌幹細胞ニッチの形成が抑制され癌幹細胞が低下、抗癌剤に対する感受性が回復されることが期待される。
平成27年度は腫瘍移植ヌードマウスを用いた動物実験が行えなかったため次年度への繰越金が生じた。実験に用いるマウス、EGFR阻害剤、FGFR阻害剤が高額であるため相当額となった。
EGFR阻害剤、FGFR阻害剤のin vivoでの効果を、マウス腫瘍移植モデルを用いて検証する。ヌードマウスにESCC細胞を皮下移植し、移植後2週目より阻害剤の投与を開始する。EGFR阻害剤、FGFR阻害剤のin vivoでの効果をFACS、免疫染色、WB、real time PCRにより解析する。実験に用いるマウス、EGFR阻害剤、FGFR阻害剤が高額であるため相当額の次年度使用額となった。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件)
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