研究実績の概要 |
K19-cre; KrasG12D; TGFbR2 f/f(KRT)マウスにタモキシフェンを投与し、胃食道接合部(SCJ)特異的腫瘍は88%で見られた。病理学的には、扁平上皮癌と腺癌を混在したような腺扁平上皮癌と考えられ、著明な粘膜下層への浸潤を認め、扁平上皮マーカーであるKRT1, KRT14とともに腺上皮の形質マーカーKRT7, KRT8の発現がみられ、さらに幹細胞のマーカーであるSOX2, SOX9, CD44などの分子の発現が増加していた。 接合部腫瘍を摘出、分離、培養し、接合部腫瘍細胞株(mJT1、mJT4細胞)を樹立した。三次元培養により、オルガノイドを作成した。培養条件によった有意な遺伝子発現変化はみられなかった。Wntシグナルリガンド、EGF、TGFbシグナルのリガンド、またそのアンタゴニストであるNogginなどで刺激したが、扁平上皮マーカーp63、腺上皮マーカーMUC4ともに有意な発現変化は見られなかった。 KRTマウスにCDH1 f/fマウスを交配して胃食道接合部腫瘍について検討した。このマウスでも3w後接合部特異的に腫瘍が発生したが、転移は認めず、組織型も同様であり接合部癌におけるe-cadherin遺伝子の影響は限定的であった。 KRTマウスにLacZ遺伝子を導入して染色によって追跡し、接合部に発生する腫瘍はK19陽性細胞が起源であることがわかった。また接合部深部腺管において6w後も染色されている細胞が残存し、CD44やSOX9などの幹細胞マーカーを強く発現しており腫瘍との類似性が示唆された。Lgr5-cre; KrasG12D; TGFbR2 f/fマウスを作出したが、KRASとTGFbの遺伝子改変では腫瘍化をきたさなかった。すなわちK19陽性かつLgr5陰性細胞が起源になっている可能性が考えられた。
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