EBウイルス陽性胃癌の発生には異常なDNAメチル化が関与していることが知られている.近年,プロモーター領域のメチル化を対象とした脱メチル化剤が抗癌剤として注目されており、我々は脱メチル化剤アザシチジン(Azacitidine:AZA)のEBウイルス陽性胃癌に対する抗腫瘍効果と上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)への影響について検討した.EBウイルス陽性ヒト胃癌細胞株SNU719とEBV陰性ヒト胃癌細胞株KATOIIIを10μM AZA添加もしくは非添加培地で培養した.我々は生細胞数計測とMTS assayを用いて抗腫瘍効果を評価し,細胞周期とApoptosisを評価した.細胞形態の変化と浸潤能を評価した。結果として、AZAはSNU719、KATOIIIに対し増殖抑制効果を示した.AZAはSNU719に対してG2/M arrestとApoptosisを誘導した.また,AZAはSNU719に対し浸潤能を抑制した.AZA添加培地で培養したSNU719は上皮細胞のようにmonolayerを形成するように変化し,浸潤能が有意に低下した.Western blottingで,AZA添加培地で培養したSNU719ではE-cadherinの発現量が亢進した.KATOIIIではAZAはApoptosisを誘導せず,EMTも抑制しなかった.AZA添加培地で培養したSNU719ではp73,RUNX3のプロモーター領域が脱メチル化されp73,RUNX3の発現量が亢進し,p21の発現量も亢進した.またQuantitative Real-time RT-PCRの結果,EBVウイルス遺伝子であるBZLF1の発現が増加した.以上より、脱メチル化剤はEBウイルス陽性胃癌に対してApoptosisとEMT抑制を引き起こす.この効果にはp73,RUNX3のプロモーター領域の脱メチル化,BZLF1の発現亢進が関与していることが考えられた.
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