研究課題
生活習慣病や化学療法などに伴う消化管運動機能異常は重要な臨床課題の一つであり,モチリン受容体(MLNR)やグレリン受容体(GHSR)作動性薬剤の開発およびその臨床応用が期待されている。申請者は,平成12年からMLNR,GHSRにおけるリガンド結合の分子機構の解析とin vivoにおける両受容体の生理機能の解析を継続して研究している。本研究課題は,蛍光蛋白標識MLNRを用いて受容体活性化機構,脱感作機構を明らかにするとともに,ヒトMLNRトランスジェニックマウス(MLNR-TGマウス)を用いて,生体における中枢神経系と消化管との臓器連関,MLNRとGHSRの相互連関を明らかにすることを目的としている。平成27年度は,① Halo-Tag標識MLNR持続発現CHO細胞株を用い,MLNRのリガンドであるモチリン,エリスロマイシン,およびその他のマクロライド系薬剤のMLNR結合能,脱感作能を検討し,モチリン刺激では脱感作が起こるが,エリスロマイシンでは脱感作が起こりにくいこと,マクロライド系のクラリスロマイシン,リンコマイシン,タクロリムスはMLNRに結合するが脱感作は起こりにくいことを明らかにした。また,リガンド-MLNR複合体は細胞内へtrafficking後,MLNRは細胞膜へrecyclingするが,その時間はモチリン刺激時にエリスロマイシン刺激時に比して長いことが脱感作の機序であることを明らかにした。② MLNR-TGマウスへのモチリン,エリスロマイシンのリガンド末梢投与では,WTマウスに比して,胃排泄時間,小腸通過時間の短縮が見られることを明らかにした。
3: やや遅れている
in vitroでのMLNRのリガンド結合機構の解析は計画通りに進行しているが,in vivoでのMLNR-TGマウスを用いての臓器連関,MLNRとGHSRの相互連関の解析は,TGマウスの確保が一時期困難になっていたためやや遅れている。
平成28年度は,新たな蛍光蛋白標識MLNRを作成し,FRETを用いたMLNR活性化dimerizationの解析予定とともに,in vivoでのMLNR-TGマウスを用いた中枢と消化管の臓器連関,GHSRとの相互連関の解析を行う予定である。さらに,得られた成果を国際学会発表,論文発表する予定である。
平成27年度は,in vivoでのMLNR-TGマウスを用いての臓器連関,MLNRとGHSRの相互連関の解析がやや遅れたため,次年度繰越金が発生した。
平成28年度は,in vivoの解析の遅れを取り戻すつとともに,in vitroの解析も継続するため,本繰越金は使い切る予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 備考 (1件)
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