研究課題
本研究の目的は、下部食道括約筋 (LES)がbasal toneを維持する筋原性緊張調節機序を解明し、食道アカラシアの新規治療法の開発を目差すことであった。以下が研究成果の概要である。(1)ブタ下部食道括約筋を用いた基礎的研究:初年度から次年度までに、LES basal toneの維持における細胞質Ca2+濃度の重要性を報告。この細胞内Ca2+濃度の維持に、L型Ca2+チャネルやRhoキナーゼの関与は小さく、Na+/Ca2+交換機転 (NCX)が重要な役割を果たすことを解明した。このNCXの制御する因子として、硫化水素 (H2S)が重要な役割を果たすことを明らかにしていた。最終年度では、H2S産生酵素の同定及びH2SとNCXの関連性についてさらなる検討を行った。我々は薬理学的な阻害剤と免疫染色法を用いて、ブタLESの筋原性筋緊張調節に関与するH2S産生酵素がcystathione-gamma-synthase (CBS)及び3-mercaptopyruvate sulfurtransferase (3-MST)であることを明らかにした。さらに、NCXを過剰発現したTgマウスでは、H2S産生酵素阻害剤による細胞質Ca2+濃度低下率が有意に増大しており、H2SはNCX調節を介し、筋原性筋緊張調節を担っていると考えられた。(2)食道胃接合部通過障害(EGJOO)に認めるLES弛緩不全の機序解明:アカラシアの発症予防を目標に、前アカラシア状態であるEGJOOに認めるLES弛緩不全の機序の解明を行ったところ、正常人に認めるLES受容性弛緩が障害されていることを見出した。さらに、消化管アセチルコリンエステラーゼ阻害剤であるアコチアミドが、この障害されたLES受容性弛緩反応を回復させることを見出し、アコチアミドがアカラシア発症を予防薬となる可能性を示した。
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