| 研究実績の概要 |
脂肪組織と癌細胞の混合培養系で、培養液中のIGF-1, レプチン、アディポネクチン、レジスチン濃度が減少した。さらに、これらの因子を癌細胞単独培養系に投与すると、IGF-1が癌細胞の増殖を促進し、アポトーシスを抑制する抑制傾向が見られた。他の因子については、明瞭な結果は得られなかった。また、混合培養系では、脂肪組織が癌細胞のpERK-1/2, pAKT, p4E-BP1(インスリン受容体)発現を促進した。以上より、脂肪組織は、IGF-1/IR, MAPK/AKT pathwayを介して癌細胞の生存、増殖に影響を与えると考えられた。
興味深いことに、一部の癌細胞は脂肪滴沈着と共に、現在分子標的であるHER2の発現を減少させた。このことは、HER2を標的とした治療において、脂肪組織がその治療抵抗性に関与することを示唆している。今後は、これらの知見を動物実験で検討予定である。
本研究期間に、以下の論文を発表した。
1. Aoki S, Sakata Y, Shimoda R, Takezawa T, Oshikata-Miyazaki A, Kimura H, Yamamoto M, Iwakiri R, Fujimoto K, Toda S. High-density collagen patch prevents stricture after endoscopic circumferential submucosal dissection of the esophagus: a porcine model. Gastrointest Endosc. PubMed PMID: 27751874.
2. Nakayama A, Toda S（他7名、最終）. Interaction between Esophageal Squamous Cell Carcinoma and Adipose Tissue in Vitro. Am J Pathol. 186:1180-94, 2016
3. Aoki S, Takezawa T, Sugihara H, Toda S. Progress in cell culture systems for pathological research. Pathol Int. 66:554-562, 2016
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