研究課題/領域番号 |
26460945
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
溝下 勤 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40347414)
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研究分担者 |
谷田 諭史 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30528782)
城 卓志 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30231369)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | in vitro 三次元培養腺管 / 胃幹細胞 |
研究実績の概要 |
我々は、研究目的である「消化器疾患治療の新たな展開(胃型化・腸型化の制御による分化誘導療法)を探る」ために、平成26年度は以下のような研究を行った。 1.長期in vitro 三次元培養系でのマウス胃腺管の幹細胞の同定と上皮間葉相互作用の観点からの線維芽細胞の関与:我々が確立した胃腺管の長期in vitro 三次元培養系において、さらに線維芽細胞の重要性を報告した。即ち、予め胃から線維芽細胞だけを取り出して増殖させ、この増殖した線維芽細胞をin vitro 三次元培養系と共培養するとgastrospheres(三次元培養腺管+線維芽細胞の集団)の大きさと数が有意差を持ってコントロール(in vitro 三次元培養腺管のみ)より増加していた。また、このgastrospheres内には、RNA in situ hybridizationにて、幹細胞マーカーであるleucine-rich repeat-containing G protein-coupled receptor-5(LGR5)陽性の細胞が存在していた。以上より、gastrospheres内の胃由来の線維芽細胞が上皮間葉相互作用によって、LGR5陽性の幹細胞を支持し、かつ胃腺管の増殖と分化をコントロールしていると考えられた。 2.ラットN-methyl-N’-nitro-N-nitorosoguanidine(MNNG)胃発癌モデルでのrebamipideの腫瘍増殖抑制効果:我々は、「長期in vitro 三次元培養系を用いた胃型腺管の腸型化の分子メカニズムの解明」をするため、まず胃型形質の胃癌の性質・特徴を把握すべく前記のラット胃型形質胃癌発生モデルで実験を行った。このモデルにて胃粘膜保護薬であるrebamipideによる胃癌増殖抑制効果が明らかとなった。 以上が、平成26年度の研究実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画調書記載内容と照らし合わせた研究の進行度は、以下の如くである。 まず、「1.長期in vitro 三次元培養系でのマウス消化管腺管の幹細胞の同定と上皮間葉相互作用の観点からの胃型・腸型粘液形質発現への線維芽細胞を含めた間葉系細胞の関与」に関しては、「研究実績の概要」で記載した如くの成果を上げ、英語論文を作成した(Am J Pathol., 185, 798-807, 2015.)。現在は、胃あるいは腸の分化に関わる線維芽細胞を含めた間質に特異的な遺伝子の発現に注目して研究を継続している。 次に「2.長期in vitro 三次元培養系を用いた胃型腺管の腸型化の分子メカニズムの解明」に関しては、「研究業績の概要」で記載した如くの成果を上げ、英語論文を作成した(Toxicol Pathol., 67, 271-277, 2015.)。現在は、前記のin vitro三次元培養系を用いて、①Wnt シグナル系を賦活する腸分化促進因子R-spondin 1を作用させる、②腸特異的発現遺伝子Caudal-related homeobox gene(Cdx)1とCdx2を組み込んだアデノウイルスベクターを導入する、③胃の分化に関与するRunt-related transcription factor 3(Runx3)やSRY (sex determining region Y)-box 2(Sox 2)のRNAiノックダウンを行う、④脱メチル化による内因性Cdx2発現誘導を行う、などの研究計画調書に記載した内容の研究を進めている。 以上より、区分は(2)と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、平成27年度の研究計画調書記載内容と照らし合わせて今後の研究の推進方策につき以下のことを考えている。 3.長期in vitro 三次元培養系を用いた腸型腺管の胃型化の分子メカニズムの解明:研究計画調書に記載した如く、 in vitro 三次元培養系で培養したマウス腸腺管(小腸、大腸)について、我々はすでに長期の培養を行っても胃型粘液形質は発現せず腸型粘液形質のみを保持していることを確認している。このマウス腸腺管に、①胃の分化に関与するSonic hedgehog(SHH)を作用させる、②Runx3やSox2など胃の分化に関与する転写因子を組み込んだアデノウイルスベクターを導入する、③Cdx1およびCdx2のRNAiノックダウン、などを行い腸型から胃型への分化誘導が起きるかどうかを確認する。 4.マウスDSS(dextran sulfate sodium)腸炎モデルを用いた大腸粘膜欠損部位へのin vitro 三次元培養大腸粘膜腺管の移植による再生機構の解明:研究計画調書に記載した如く、EGFP(enhanced green fluorescent protein) transgenicマウス(C57BL/6J系、The Jackson Laboratory)の大腸より粘膜腺管を取り出し、in vitro 三次元培養を用いて培養する。この培養腺管を、2%DSS(dextran sulfate sodium)にて大腸炎を起こしたマウス(C57BL/6J系)の大腸に経肛門的に注入し粘膜欠損部に定着するか否か?を検討する。過去の文献(Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol., 298, G255-66, 2010)も参考にする。もし、移植した粘膜腺管が粘膜欠損部に定着すればGFP陽性の大腸腺管が確認されるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったLGR5(Abgent)、MUC5AC(Novocastra Laboratories)、などの抗体が平成26年度の年度末(平成27年3月末)までに納入されなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に上記抗体を購入して、研究を継続する予定である。
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