研究課題
我々は、研究目的である「消化器疾患治療の新たな展開(胃型化・腸型化の制御による分化誘導療法)を探る」ために種々の検討を行い、以下のような研究成果を得た。1.長期培養可能なin vitro腺管三次元培養系での検討により、gastrospheres(三次元培養腺管+筋線維芽細胞の集団)と「胃の筋線維芽細胞」を共培養すると、培養腺管内の胃上皮細胞でのmucin 5AC glycoprotein(MUC5AC)、mucin 6 glycoprotein(MUC6)、pepsinogen C(PgC)、などの胃上皮の分化マーカーの発現が増加し、胃への分化が促進することを突き止めた。即ち、胃の腺管上皮の分化に筋線維芽細胞が重要であることを確認した。また、我々は、「胃の筋線維芽細胞」と「腸の筋線維芽細胞」に特異的な遺伝子を同定した。即ち、胃の筋線維芽細胞に高発現しているGrowth arrest specific 1(GAS1)と腸の筋線維芽細胞に高発現しているHomeobox C8(HoxC8)、Notch 1、SRY-box containing gene 10(Sox10)が、上皮間葉相互作用により、それぞれ上皮系の「胃」・「腸」への分化に重要な役割を果たしていると考えられた。2.クローン病と腸管ベーチェット病の臨床症例での検討にて、胃粘膜上皮に特異的に発現するMUC5ACが、活動性炎症のある腸粘膜上皮では異所性発現しているが、寛解状態の粘膜では発現が消失していることを明らかにした。即ち、胃粘膜上皮に特異的に発現するMUC5ACの腸上皮での異所性発現が、クローン病と腸管ベーチェット病の内視鏡的な再燃あるいは寛解の予測因子となる可能性が考えられた。以上が、研究実績である。
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Medicine (Baltimore)
巻: 96 ページ: e7800
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