研究実績の概要 |
本研究では胃癌の網羅的発現解析を行い、腫瘍の生物学的特徴を解明するとともに薬効予測に有用な新規バイオマーカーを探索することを目的とする。まず培養細胞株を用い、胃癌バイオマーカーの探索を行った。SNU-16, AGS, SNU-5, SNU-1, NCI-N87, KATO-III, Hs746Tの7種について遺伝子プロファイルの検索を行い、NCI N87(HER2陽性),Hs746T(MET陽性), KATO-III(FGFR2陽性)を抽出した。 癌細胞に発現するCD44v8-10はcystine transporter(xCT)の安定化に寄与することで酸化ストレスに抵抗性の性質を獲得していることが明らかにされている。今回抽出された3種の細胞についてCD44v8-10の発現確認と、xCT阻害剤としてのsulfasarazine(SSZ)に対する感受性の比較を行った。 ①WBにてCD44v8-10の発現比較を行った。発現はHs746Tで高く、NCI N87ではやや低め、KATO-IIIではほぼ発現を認めなかった。 ②これらの細胞に対し、SSZに対する感受性の評価を行った。In vitroの評価として各々の細胞に対しSSZ treat後viabilityの比較を行った。一方、in vivoの評価として各々の細胞を移植した担癌マウスに対しSSZの腹腔投与を行い、その腫瘍径について観察・比較を行った 。その結果in vitroではCD44v高発現株である746T細胞で高い感受性を示したが、in vivoでは感受性をほぼ認めなかった。NCI N87細胞ではin vitroにおいてはほとんど感受性を示さなかったものの、in vivoにおいては高い感受性を示していた。これらの予想された結果との相違点とHER2およびMET発現の相互関係について明らかにできれば新たな治療戦略の鍵となると思われる。
|