研究課題/領域番号 |
26460950
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
永原 章仁 順天堂大学, 医学部, 教授 (00266040)
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研究分担者 |
浅岡 大介 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30420847)
北條 麻理子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60372934)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機能性ディスペプシア / 胃内圧 / 酸分泌抑制薬 / 消化管運動調節薬 / 抗鬱薬 / 抗不安薬 |
研究実績の概要 |
機能性ディスペプシア(FD)では、消化管運動機能異常がその病態に深く関わっているが、今年度は、昨年度に引き続き、高解像度内圧測定法(ハイレゾリューションマノメトリー 以下HRM)による消化管内圧測定法を用いて、FDに特徴的である「食事に関連した症状」と内圧の関連について探索するため、液体食負荷による胃内圧測定を行っている。この結果は現在解析中である。 また、我々は病態を考慮した新たな治療法を探索した。FDガイドラインでは明確な方針が示されていなかった複数の薬剤の組み合わせ治療の効果についての研究である。消化管運動調節薬に酸分泌抑制薬あるいはプラセボを二重盲検で併用したところ、酸分泌抑制薬はepigastric pain syndrome症状を改善することが明らかとなると同時にpost prandial syndrome症状については差を認めなかった。これは我が国で初の二重盲検でのFDに対する複数の薬剤の組み合わせ治療効果の知見である。 また、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)のFDへの効果について観察研究を行い、一定の効果をあることを見いだし、PCABのFD治療への位置づけを明確にした。 FDでは、精神神経疾患の合併が多いことが知られており、抗うつ薬や抗不安薬が用いられることも多い。我々は以前、これらの薬剤の治療効果のsystematic reviewをおこなったが(J Gastroenterol. 200;40:1036-42.) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬や、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬など新薬が登場し、再度、FDに対するこれらの薬剤の効果についてsystematic reviewを行った。結果、これらの薬剤の有用性は示されたが、試験間の不均一性や出版・選択バイアスの存在といった問題点を指摘し、今後の課題が顕わとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HRMによる胃内圧測定は、健常ボランティアでの試験を終了し、現在正常値の解析を行っており、当初の目標の第一段階を達成した。しかし、FD例での内圧については、目標症例に対して応募者が少なく、募集を積極的に行っているものの実際の登録症例の集積が十分とは言えない。 このため並行してFD治療に対する探索的研究を実施した。FD例に消化管運動改善薬に、二重盲検で酸分泌抑制薬あるいはプラセボを組み合わせた治療をおこない、その結果は、第17回日本神経消化器病学会・第9回機能性ディスペプシア研究会・第83回消化器心身医学研究会・第5回IBS研究会 合同学術集会2015でオーラル発表(上腹部消化器症状を有する患者に対するアコチアミドの治療効果およびファモチジンとの併用効果の検討)した。この結果は、英文原著雑誌に投稿中である。さらに、FDに対する抗うつ薬、抗不安薬のsystematic reviewについても、解析が終了し、この結果は第12回日本消化管学会学術集会で発表(抗不安薬・抗うつ薬による機能性ディスペプシアの治療 ーシステマティックレビュー)し、現在英文原著雑誌に投稿中である。 後者2研究についての達成度は100%であった。 また、PCABの効果についての研究結果は、第17回日本神経消化器病学会・第9回機能性ディスペプシア研究会・第83回消化器心身医学研究会・第5回IBS研究会 合同学術集会2015でオーラル発表(機能性ディスペプシア患者に対するカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)投与の症状改善効果の検討)した。 これらの研究成果は、第17回日本神経消化器病学会、スポンサードシンポジウムにおいて発表(改訂GERDガイドラインから考える機能性消化管障害の複合―酸関連上腹部症状と酸非関連上腹部症状―)した。
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今後の研究の推進方策 |
HRMによる胃内圧測定では、今後、FD例でのリクルートを推進し、症例の蓄積をはかる。 一方、FDでの、脳腸相関、酸分泌、消化管運動機能異常のクロストークについては、臨床面から検討を進めその病態の一端が明らかとなり、これらの一連の研究はFDの実地臨床に重要なエビデンスを構築することができた。今後は、これまでに得られた結果のうち、主要な2本の研究成果の英文原著雑誌への早期のacceptを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
HRM研究での症例登録の集積が遅れており、症例登録後の解析が必要となる。そのため次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に沿い、研究が遅滞無いように推進し、当初計画に関わる経費について適正に使用する。
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