研究課題
機能性ディスペプシア(FD)は、器質疾患を認めないにも関わらず、胃もたれ、胃痛を訴えるものと定義されているが、じつは器質疾患の定義がいまだ不明確なのである。そこで、われわれは、慢性胃炎の各種内視鏡所見を定義した京都分類をもちいて、内視鏡所見と症状との関連を検討した。その結果、びらん、発赤、浮腫といったいわゆる軽微な内視鏡所見はFD症状をもたらさないことを明らかにし、器質疾患の定義を明確にすることができた。この研究の臨床的意義は極めて重要である。病態機能については、高解像度内圧測定法での胃内圧の測定を試み、FDに特徴的である「食事に関連した症状」と内圧の関連について探索した。結果、胃の基礎圧により、負荷後内圧が異なることを明らかにした。治療については、症状のコントロールが困難な例も存在するが、実地臨床でのdataが不足していた。そこでFD治療中あるいは治療歴のある患者での自覚症状を検討したところ、多くの患者で症状がコントロールされていない実態が明らかとなった。また、2剤併用療法の効果について、世界で初めて二重盲検法で酸分泌抑制薬の上乗せ効果を調べ、改善効果に差を認めないことを明らかにした。さらに、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)のFD治療における効果も検証し、FD治療への位置づけを明確にした。一方、FDでは、精神神経疾患の合併が多いことが知られており、抗うつ薬や抗不安薬が用いられることも多い。これらの薬剤の効果についてsystematic reviewを行った結果、これらの薬剤の有用性は示されたが、試験間の不均一性や出版・選択バイアスの存在といった問題点を指摘し、今後の課題が顕わとなった。本研究課題では、FDの診断の問題点、病態解明の新たな手法、治療の問題点と今後の展開について明らかにすることができた。
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Biomedical Report
巻: 6 ページ: 175-180
10.3892/br.2016.828
Internal Medicine
巻: 印刷中 ページ: -
Digestion
巻: 投稿中 ページ: -