研究課題
切除不能進行・再発胃癌に対する標準治療は、国内ではTS-1+CDDP(SP)療法およびTS-1+l-OHP療法であり、海外ではカペシタビン+CDDP(XP)療法である。近年、韓国で報告されたClassic試験の結果から本邦ではXP療法は胃癌の補助化学療法に適応拡大された。カペシタビンの標的酵素であるThymidine phosphorylase (TYMP)は血小板由来内皮細胞増殖因子と同一分子として知られ、腫瘍内の発現レベルが高いと予後不良であることがしられている。しかしながらTYMP活性の高い腫瘍に対してはカペシタビンは有効を示すことも報告されている。本研究では、胃癌症例を対象として血清TYMP値とXP療法の有効性との関連性を解析し、血清TYMP値によるXP療法の効果予測・治療モニタリングを行うことを目的とする。そこでまずは血清TYMP値が腫瘍組織でのTYMP発現の代用マーカーとなりうるかを検討すべく患者同意済みの保存している胃癌症例103例の手術標本に対してSIGMA-ALDRICH社製のRabbit polyclonal anti-TYMPを用いて染色した。また103例中、血清保存している78例に対してMyBioSource社製のThymidine phosphorylase(TP), ELISA kitを用いて血清TYMPを測定した。特殊な組織型1例を除く77例を対象に血清TYMPと腫瘍の免疫組織型染色によるTYMPの発現との関連性を検討した結果、低分化および印環細胞癌において高・中分化型腺癌よりも血清TYMP値が有意に高いことを認めたが腫瘍内のTYMP発現との関連性は認めなかった。しかしながら以前の食道癌におけるわれわれの研究において血小板数と予後との関連性が示唆されたが今回、胃癌の免疫染色を行うことで胃癌組織でのTYMPの発現と血小板数に関連性があることが示唆されTYMPの高発現と血小板数高値は予後が不良であることが示唆された。
すべて 2018
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Toho Journal of Medicine
巻: 4(2) ページ: 66-73