研究課題/領域番号 |
26460953
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
福井 広一 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60378742)
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研究分担者 |
大島 忠之 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00381814)
渡 二郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10311531)
三輪 洋人 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80190833)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 再生医学 / 臨床 / 感染症 / 免疫学 |
研究実績の概要 |
消化管は様々な化学的・物理的刺激や抗原に暴露されている臓器であり,そのため消化管粘膜は絶え間なく傷害と再生を繰り返している.薬剤起因性消化管傷害を来す薬物の中で非ステロイド性抗炎症薬 (nonsteroidal anti-inflammation drug; NSAID) は最も重要なものであるが,我々は既に,Regenerating gene (REG) がNSAID 起因性消化管粘膜傷害に対して粘膜保護作用を有することを明らかにした.そこで本年度は,その作用のメカニズムを明らかにするためにREG 遺伝子改変マウスを用い,REG 蛋白の消化管粘膜透過性に関する役割について検討した.その結果,野生型マウスに較べREG 遺伝子改変マウスの小腸粘膜上皮細胞では,タイトジャンクション蛋白である Claudin 3 の発現が有意に減弱し,小腸粘膜の透過性が亢進していることを示した.また in vitro 実験では,REG 蛋白刺激によって消化管上皮細胞における Claudin 3, Claudin 4 の発現が増強し,その変化に伴って消化管上皮細胞間隙の電気抵抗性が増強することを示した.さらには,REG 蛋白による Claudin 3, Claudin 4 の発現誘導に Sp1, Akt, ERK シグナルの活性化が関与することを明らかにした.他方,REG 蛋白には血管内皮細胞に対して増殖作用と抗アポトーシス作用を示す知見も得たが,これらの REG 蛋白の作用は全て消化管粘膜の修復と保護にとって重要であると考えられた.一方,消化管粘膜の恒常性維持には粘膜の透過性のみならず粘膜免疫の制御が重要である.実際,REG 蛋白はレクチン様構造を有し,抗菌ペプチドとしての機能を有する可能性が報告されている.そこで我々は,germ free マウスに SPF マウスの便移植を行ったモデルを作成し,免疫担当細胞の構成変化と REG ファミリー遺伝子の発現動態を検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,REG 蛋白が薬剤起因性消化管粘膜傷害に対して粘膜保護作用を示すメカニズムとして,① REG 蛋白がタイトジャンクション蛋白の発現を誘導して粘膜透過性を抑制すること,② REG 蛋白が血管内皮細胞の増殖能と抗アポトーシス能を促進することを明らかにした.本研究は概ね当初の計画通りに進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
消化管粘膜の恒常性維持におけるREG 蛋白の役割を検討するため,REG 蛋白の粘膜免疫への関与について焦点を当てる.便移植を行った germ free マウスや REG 遺伝子改変マウスの消化管粘膜より免疫担当細胞を分離し,それらが産生するサイトカインのプロファイルを解析する.さらには REG 蛋白が腸内細菌叢や免疫担当細胞のサイトカイン産生に及ぼす効果を検討する.
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