研究課題
バレット食道(BE)の腸型形質発現の検出および特殊腸上皮化生の診断に、NBI拡大観察下ブラッシング法が非侵襲的で有用であり(Murao T. et al. J Gastroenterol, 2012)、バレット腺癌背景のバレット粘膜においてCD55が高発現することを報告した(J Gastroenterol Hepatol. 2016;31(1):99-106)。Long segment BE(LSBE)およびバレット腺癌の頻度が本邦より多い米国の検体を用い、同様に再検討を行った。米国人のバレット腺癌の癌部および周囲のバレット上皮部さらに対照群のshort segment BE (SSBE)、LSBEよりブラッシングにより検体を採取し、得られたサンプルから抽出したRNAをマイクロアレイ(Affymetrix GeneChip)にて網羅的に解析し、有意差が認められた遺伝子について米国の検体を用いてその発現量を比較検討した。腺癌群と対照群のバレット上皮部での遺伝子発現量の比較では、腺癌群でCD55、MMP1、TRHDE、PDZK1の発現が有意に高く、SCNN1Bの発現が有意に低かった。次に日本人の検体を用いた検討では、2名のLSBE症例を含むEAC群の患者13名、コントロール群としてLSBE患者18名、SSBE患者41名を登録した。SCNN1BがLSBE群で有意に発現量の低下が認められ、TRHDE、PDZK1、SERPINB7ではLSBE群において有意な過剰発現が見られた。さらに4群比較においてコントロール群のSSBEと比較しEAC群のLSBEにおいてSERPINB7の有意な発現量の増加が認められた。米国患者の結果とほぼ同等の結果が得られた。日本人の症例においてもSERPINB7がBEの伸長に関与しており、発癌の危険因子のバイオマーカーとして、有用である可能性が考えられた。
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