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2014 年度 実施状況報告書

脳内オレキシンシグナル低下はIBSの病態を引き起こす

研究課題

研究課題/領域番号 26460955
研究機関旭川医科大学

研究代表者

奥村 利勝  旭川医科大学, 医学部, 教授 (60281903)

研究分担者 粂井 志麻  旭川医科大学, 大学病院, その他 (00548969)
高草木 薫  旭川医科大学, 医学部, 教授 (10206732)
野津 司  旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30312367)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードオレキシン / 中枢神経 / 内臓知覚 / ラット / 過敏性腸症候群 / 直腸伸展刺激
研究実績の概要

申請者は、中枢神経系がどのように胃腸機能調節に関わるかについての基礎研究を、この25年継続研究し、Gastroenterology3編を含む約40の脳腸相関に関わる英文原著論文を公表して来た。オレキシンが摂食亢進作用を有すと公表された1998年からこの15年間はオレキシンに関する研究を続け、論文を公表してきた。オレキシンは中枢神経系に作用して胃酸分泌や消化管運動を迷走神経依存性に促進させる。また、これまでの他の研究者から、オレキシンは睡眠覚醒リズムの調節に深く関与すること、オレキシンの作用低下が抑うつ状態を引き起こすことなどから、オレキシンの脳内シグナルの低下が消化器機能低下、食欲低下、睡眠障害、うつ状態などの臨床の現場で見る機能性消化管障害患者の病態を一元的に説明できる可能性を申請者は提唱した(J Gastroenterol Hepatol 2011)。即ち「脳内オレキシンシグナルの低下がIBSなどの機能性消化管障害を引き起こす」この仮説を検証することが本研究の目的である。本研究ではIBSの主要病態である内臓知覚過敏にオレキシンが影響を及ぼすか否か検討した。先ず、オレキシンが中枢神経系を介して内臓知覚過敏に影響を及ぼすか否かを検討し、この一年でオレキシンは脳内OX1受容体を介して内臓知覚を鈍麻させることを見いだし既に公表した(Okumura T et al., Brain Res 2015). これは、我々の作業仮説である、脳内オレキシンシグナルの低下がIBSで見られる内臓知覚過敏を引き起こすことを支持する。今後は更にこのオレキシンのantinociceptive actionの脳内メカニズム解明とIBSモデル動物での内因性オレキシンの作用を検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は、無麻酔ラットにおいて大腸伸展刺激を加え、この時の腹壁筋電図をvisceromotor responseとして計測し内臓知覚過敏を評価する測定系を確立した。この系で脳室内オレキシン投与の内臓知覚過敏に及ぼす影響を調べた。既に英文原著論文(Okumura T et al., Antinociceptive action against colonic distension by brain orexin in conscious rats. Brain Res 2015)として公表したように、外因性に脳室内投与したオレキシンAは用量依存性に直腸伸展刺激に対する内臓痛の閾値を増加させた。この変化はオレキシンAを末梢投与したり、オレキシンBの中枢投与では再現されなかった。更に、モルヒネによる直腸伸展刺激に対する内臓痛の閾値亢進(鎮痛効果)は脳内にオレキシン受容体拮抗薬SB334867の前投与でブロックされた。以上成績からオレキシンは中枢神経系に作用して内臓知覚を鈍麻(鎮痛効果)させること、この効果は内因性のオレキシンにも認められる事を世界に先駆けて見いだした。一方、IBSのモデル動物作成は既報に準じて準備を進めているが、既報通りのモデル作成には至っておらず、この点は次年度以降に持ち越しの状態である。

今後の研究の推進方策

更に脳内オレキシンによる内臓知覚鈍麻(鎮痛効果)の脳内メカニズムについて更に検討を加える。これまで、内臓知覚に関しての脳内制御メカニズムはほぼ未解明と言って良いが、体制痛の制御メカニズムを参考にして、脳内ドパミン系、アデノシン系などが内臓痛制御に関わっているかの検討を始めている。更にこれらの系がオレキシンによる内臓痛鈍麻に関与するのか否かを、ドパミンやアデノシンのagonist, antagonistを用いて研究を進める準備を始めた。また、多くのオレキシンの作用(胃酸分泌亢進、胃運動亢進、膵液分泌亢進)はオレキシンが延髄迷走神経背側核の神経細胞に作用した結果、迷走神経(遠心路)を介して発揮されることが明らかにされているが、この内臓知覚過敏に関わるメカニズムにも迷走神経(求心路)が関与するのかを明らかにする為に迷走神経切断動物で検討する。更に、前年度からの持ち越し課題である、IBSモデル動物の作成を平行して進め、加えて、大腸伸展刺激を加え、この時の外側視床下部を含めた中枢神経系のc-Fos、orexin活性を免疫組織学的に評価し、内臓知覚過敏におけるオレキシン神経系の関与を組織学的に解析する。本研究課題の最終目標であるオレキシンシグナルの低下がIBSを引き起こすか否かの命題に迫りたい。

次年度使用額が生じた理由

予定通り進めておりますが、残金が出てしまいました。

次年度使用額の使用計画

27年度の物品購入等に充当する予定。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Antinociceptive action against colonic distension by brain orexin in conscious rats.2015

    • 著者名/発表者名
      Okumura T, Nozu T, Kumei S, Takakusaki K, Miyagishi S, Ohhira M
    • 雑誌名

      Brain Res

      巻: 1598 ページ: 12-17

    • DOI

      10.1016/j.brainres.2014.12.021.

    • 査読あり
  • [備考] 旭川医科大学総合診療部ホームページ

    • URL

      http://www.asahikawa-med.ac.jp/index_h.php?f=hospital+patient+tyuou_sougou

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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