研究実績の概要 |
申請者は、中枢神経系がどのように胃腸機能調節に関わるかについての基礎研究を、この25年継続研究し、Gastroenterology3編を含む約40の脳腸相関に関わる英文原著論文を公表して来た。オレキシンが摂食亢進作用を有すと公表された1998年からこの15年間はオレキシンに関する研究を続け、論文を公表してきた。オレキシンは中枢神経系に作用して胃酸分泌や消化管運動を迷走神経依存性に促進させる。また、これまでの他の研究者から、オレキシンは睡眠覚醒リズムの調節に深く関与すること、オレキシンの作用低下が抑うつ状態を引き起こすことなどから、オレキシンの脳内シグナルの低下が消化器機能低下、食欲低下、睡眠障害、うつ状態などの臨床の現場で見る機能性消化管障害患者の病態を一元的に説明できる可能性を申請者は提唱した(J Gastroenterol Hepatol 2011)。即ち「脳内オレキシンシグナルの低下がIBSなどの機能性消化管障害を引き起こす」この仮説を検証することが本研究の目的である。これまでIBSの主要病態である内臓知覚過敏にオレキシンが影響を及ぼすか否か検討し、オレキシンは脳内OX1受容体を介して内臓知覚を鈍麻させる、このメカニズムに脳内ドパミンやアデノシンシグナルが関与することを見いだし公表した(Okumura T et al., Brain Res 2015, Neurosci Lett 2015, J Neurol Sci 2016、J Pharnacol Sci 2016)。本年度は更に、神経ペプチド グレリンの中枢神経を介する内臓知覚鈍麻作用を見出し、このメカニズムに脳内オレキシンシグナルが関与することを見出し報告した(Okumura et al., Brain Res 20180).
|