研究課題/領域番号 |
26460956
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤谷 幹浩 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (80322915)
|
研究分担者 |
上野 伸展 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30436000)
稲場 勇平 旭川医科大学, 医学部, その他 (30447099)
盛一 健太郎 旭川医科大学, 医学部, 講師 (70455715)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ポリリン酸 / 腸内細菌 / 腸炎 |
研究実績の概要 |
1. CSFおよびポリリン酸の腸上皮細胞への直接作用とそのメカニズムの解析 腸管上皮細胞株、正常マウス、DSS腸炎マウスの腸管にポリリン酸を投与し、細胞および組織中の遺伝子発現の変化について、高速半導体シークエンサーIon Protonを用いて検討した。その結果、炎症関連メディエーターや上皮細胞のエンドサイトーシス関連分子を含む約40種類のmRNA発現に変化が認められた。さらに、ポリリン酸を蛍光染色し腸管上皮細胞株に投与した結果、1時間後に細胞質内に取り込まれた。これは、アイソトープ標識したポリリン酸を用いた実験でも証明された。さらに、脂質ラフツを介したエンドサイトーシスの阻害剤およびその関連分子のsiRNAを投与することで、上皮細胞内へのポリリン酸の取り込みは阻害され、腸管保護活性は減弱した。また、マウス腸管組織にポリリン酸を投与した結果、約120種類のマイクロRNAに変化をきたした。現在、これらのマイクロRNAの発現について検討中である。 2. CSFおよびポリリン酸による腸内細菌叢の制御と腸管組織への作用解析 正常および腸炎モデルマウスの便、盲腸内容物を採取し、フェノール・クロロホルム法にて細菌DNAを回収した。16s-rRNA領域DNAをユニバーサルプライマーを用いてPCRで増幅させ、制限酵素(MspI)を用い断片化し電気泳動パターンから数値化(T-RFLP法)した結果、ポリリン酸投与によって泳動パターンは大きく変化した。現在、次世代シークエンサーを用いて各サンプルの塩基配列を読みとり、変化をきたした菌属、菌種の同定を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の各検討事項について、ほぼ計画通り進展しており、おおむね順調に進展していると判断した。 1. CSFおよびポリリン酸の腸上皮細胞への直接作用とそのメカニズムの解析 ①腸管上皮細胞株、正常マウス、DSS腸炎マウスの腸管にポリリン酸を投与し、細胞および組織中の遺伝子発現の変化について、高速半導体シークエンサーIon Protonを用いて解析し、炎症関連メディエーターや上皮細胞のエンドサイトーシス関連分子を含む約40種類のmRNA発現に変化を確認した。②蛍光染色およびアイソトープ標識したポリリン酸を用いて、腸管上皮細胞によってポリリン酸が取り込まれることを明らかにした。③この現象は、脂質ラフツを介したエンドサイトーシスの阻害剤およびその関連分子のsiRNAを投与することで阻害されること、さらに、ポリリン酸が持つ腸管保護活性も減弱することを明らかにした。③ポリリン酸はマウス腸管組織に発現する約120種類のマイクロRNAに変化を及ぼすことを明らかにした。 2. CSFおよびポリリン酸による腸内細菌叢の制御と腸管組織への作用解析 ポリリン酸は正常および腸炎モデルマウスの便中、盲腸内容物中の細菌叢を大きく変化させることを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の本研究の推進について、当初の計画に大きな変更はない。 1. CSFおよびポリリン酸の腸上皮細胞への直接作用とそのメカニズムの解析 ①CSFおよびポリリン酸による遺伝子発現の変化の網羅的解析、②CSFおよびポリリン酸によるマイクロRNAおよびRNA結合蛋白発現の変化の網羅的解析、は継続して行う。また、次年度からは、③CSFおよびポリリン酸の標的分子の同定も行っていく。 2. CSFおよびポリリン酸による腸内細菌叢の制御と腸管組織への作用解析 ①CSFおよびポリリン酸による腸内細菌叢の変化の解析、については継続する。また、次年度から、②CSFおよびポリリン酸で誘導される腸内細菌による無菌マウス腸管バリア機能の変化の解析を追加する。具体的には、①の検討で、増加あるいは減少が確認された菌種をそれぞれ無菌マウスの腸管に移入し、一定期間飼育後に腸管を摘出し、酸化ストレス下にマンニトール漏出試験を行い腸管バリア機能の変化を検討することで、特定の腸内細菌の増殖あるいは減少を介した、CSFおよびポリリン酸の生理作用を明らかにする。 3. 初代培養にて樹立したヒト腸細胞株に対するCSFおよびポリリン酸の作用とメカニズム解析。具体的には、ヒト腸管組織から得た初代培養細胞を用いて、CSFやポリリン酸の作用を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた理由は、消耗品の購入費用およを安価に抑えることができたことである。また、本研究の成果発表について、平成26年度に予定していた内容を、一部平成27年度に延期したため旅費が抑えられたことも理由のひとつである。
|
次年度使用額の使用計画 |
当該助成金は、主に消耗品として次年度に用いる。また、一部は成果発表のための旅費として用いる。
|