研究課題
1.ポリリン酸の腸上皮への直接作用とそのメカニズム解析:前年度までに、腸管上皮細胞にポリリン酸を投与すると炎症関連メディエーターおよびエンドサイトーシス関連分子の発現が変化すること、エンドサイトーシスを阻害するとポリリン酸の腸管保護作用が減弱すること、ポリリン酸がエンドサイトーシスにより取り込なれる過程で154個のmRNA発現が有意に変化していることが明らかにした。本年度は、この中のTNFAIP3の発現が、ポリリン酸の投与により増加することを確認した。また、ポリリン酸の取り込み機構はカベオリン依存性エンドサイトーシスであり、その抑制によりTNFAIP3の発現誘導は阻害されることも明らかにした。今後はメカニズム解析を継続するとともに、成果の公表を行う予定である。2.ポリリン酸による腸内細菌叢の制御と腸管組織への作用解析:昨年に引き続き、正常および腸炎モデルマウスの便中や腸管内容物内の細菌DNAシークエンスについて解析を継続している。3.初代培養腸細胞に対するポリリン酸の作用とメカニズム解析:前年度までに、マウス腸管上皮細胞から得た初代培養細胞にポリリン酸を投与しても異常な細胞増殖や細胞死の誘導は認められなかったこと、大腸癌由来SW620細胞株に対しては強い増殖抑制効果、細胞死誘導作用を発揮することを明らかにした。本年度は、ポリリン酸の抗腫瘍メカニズムとして各種シグナル伝達系の活性化について検証し、ERKシグナルの活性化が本剤の抗腫瘍作用に関係していることを明らかにした。今後はメカニズム解析を継続する予定である。また、ポリリン酸と同様の菌由来抗腫瘍分子を探索した結果、乳酸菌由来のフェリクロームに強い抗腫瘍作用があることを同定した。今後、この抗腫瘍メカニズムについても検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
以下の各検討事項について、ほぼ計画通り進展しており、本研究はおおむね順調に進展している。今後は、これまでの結果の検証と公表のため次年度も継続することとした。1.ポリリン酸の腸上皮への直接作用とそのメカニズム解析:前年度の研究成果に加え、①ポリリン酸のエンドサイトーシスによる取り込みはカベオリン依存性であること、②ポリリン酸の腸管バリア機能増強作用にTNFAIP3の発現が関係している事、③カベオリン依存性エンドサイトーシスの抑制により、ポリリン酸のバリア増強作用、TNFAIP3の発現誘導は減弱することを明らかにした。2.ポリリン酸による腸内細菌叢の制御と腸管組織への作用解析:昨年に引き続き解析を継続している。3.初代培養腸細胞に対するCSF およびポリリン酸の作用とメカニズム解析:これまでに、マウス腸管上皮細胞から得た初代培養細胞にポリリン酸を投与した際、異常な細胞増殖や細胞死の誘導は認められないこと、大腸癌由来SW620細胞株に対しては強い増殖抑制効果、細胞死誘導作用を発揮すること、抗腫瘍メカニズムとしてERKシグナルの活性化が関係していることを明らかにした。また、ポリリン酸と同様に抗腫瘍効果を持つ菌由来物質の探索を行い、乳酸菌由来のフェリクロームに強い抗腫瘍作用があることを同定した。
1.ポリリン酸の腸上皮への直接作用とそのメカニズム解析:本年度までの研究成果から、ポリリン酸には腸管上皮に対する腸管保護作用や抗炎症作用があり、作用メカニズムとしてカベオリン依存性エンドサイトーシスによるポリリン酸の取り込みが起点となっていることを証明した。今後は、ポリリン酸によって誘導される分子の詳細な解析により下流のシグナルの解析を進め、論文での成果報告や国内外での学会発表を通じては、本研究成果の公表に努めていく。2.ポリリン酸による腸内細菌叢の制御と腸管組織への作用解析:正常および腸炎モデルマウスの便中や腸管内容物内の細菌DNAシークエンスについて解析を継続する。3.初代培養腸細胞に対するポリリン酸の作用とメカニズム解析:ポリリン酸は大腸癌細胞に対して強い増殖抑制効果、細胞死誘導作用を発揮する反面、マウス正常腸管上皮の初代培養細胞に有害な事象は引き起こさないことを明らかにした。さらに、ポリリン酸の抗腫瘍効果に関連する分子の網羅的な解析の結果、ERKシグナルの活性化が抗腫瘍作用に関与していることを明らかにした。また、ポリリン酸と同様に抗腫瘍効果を持つ菌由来物質の探索を行い、乳酸菌由来のフェリクロームに強い抗腫瘍作用があることを同定した。今後、このフェリクロームの抗腫瘍メカニズムについても検討していく。
当初想定していた成果に加え、乳酸菌由来の抗腫瘍物質フェリクロームの同定に成功した。この成果について、学会および論文での公表を予定している。追加実験および公表準備中であり、その費用として次年度使用額が生じた。
上記の理由により、in vitroおよびin vivoの追加実験費用および成果公表費用として使用する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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