研究実績の概要 |
これまでに125例の進行再発大腸癌において、Weisenbergerらの報告した5つの部位(CACNA1G, IGF2, NEUROG, RUNX3, SOCS1)を指標としたメチル化特異的PCR法によるCpGアイランドメチル化表現型(CIMP)解析、5つのEGFR関連遺伝子(KRAS, BRAF, PIK3CA, NRAS及びAKT1)に関してシークエンスによる変異解析を行った。この125例に対しては、標準的な化学療法がおこなわれており、オキサリプラチン及びイリノテカンを含む1次治療および2次治療を行った患者がそれぞれ109例、78例であり、2次治療以降に抗EGFR抗体薬を使用した患者が57例であった。CIMP陰性群においては1次治療としてオキサリプラチンを含む治療を行い2次治療でイリノテカンを含む治療に移行した場合とその逆の順序で治療した場合において、1次―2次治療を合わせた無増悪生存期間は有意差がなかったが、CIMP陽性群においては有意に1次治療で1次治療としてオキサリプラチンを含む治療を行い2次治療でイリノテカンを含む治療に移行した場合のほうが、その逆の順序で治療した場合よりも無増悪生存期間が短くなることが示された。したがって、何らかの機序でCIMPは異なる薬剤に関して投与の順序に依存した感受性に相関すること、すなわちCIMP陽性のがんは薬物感受性に関して可塑性を持つという可能性が示唆された。また、2次治療以降の抗EGFR抗体薬に有意差はつかないもののCIMP陽性群のほうがCIMP陰性群よりも無増悪生存期間が短く、CIMPは抗EGFR抗体薬の感受性にも関連する可能性が示された。現在、3次治療以降のレゴラフェニブの感受性に関する検討を行っている。
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