研究課題/領域番号 |
26460960
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
赤星 軌征 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70534551)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リゾホスファチジン酸 / 炎症性腸炎 |
研究実績の概要 |
生理活性脂質の一つであるリゾホスファチジン酸 (Lysophosphatidic acid: LPA) は血中および腸管内で産生される。ヒト炎症性腸疾患やマウス腸炎モデルでは血中LPA産生が亢進して炎症部位へのリンパ球浸潤が活性化される一方で、LPA腸管投与には創傷治癒・粘膜保護作用があることがマウスで明らかにされているが、LPA受容体を介したシグナリングは不明点が多い。本研究では比較的最近発見された3種類の非Edg型LPA受容体LPA4~6に着目し、それらの欠損マウスに炎症性腸炎を励起することで、その病態形成機序の一端をあきらかにすることを目的としている。申請者は炎症性腸炎モデルとして自然免疫応答優位のDSS経口投与、Th1応答優位のTNBS直腸投与、Th2応答優位のオキサゾロン直腸投与を試験しており、このうちオキサゾロン誘導性腸炎モデルにおいて、LPA4~6の中でも特に腸管免疫系での発現が優位であるLPA5の欠損マウスで感受性が高いことを見出した。一方LPA4欠損マウス、LPA6欠損マウスでは各腸炎モデルにおいて炎症応答の変化は見られなかった。LPA5欠損マウスにおける炎症応答やT細胞分化制御へのLPA受容体欠損の影響を調べるため、腸炎時の腸管組織からmRNAを抽出し、定量的RT-PCR法を用いて、特に重視されるTh2応答関連のサイトカインや免疫グロブリンであるIL-4、IL-5、IL-13、IL-25に加えTNF-α、IFN-γ、TGF-β、IL-12αおよびβ,IL-6、IL-1β、IL-2、IL-10、IL-17α、IL23αといったT細胞分化に関与する炎症性・抗炎症性サイトカインレベルを比較したところ、IL-4が有意に増加していることが見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Th2応答関連のサイトカインであるIL-4が有意に増加していることを見出すことができたが、それ以外の炎症性サイトカインでは優位差がなく、また炎症スコアからもLPA5欠損マウスで有為な増悪化は認められるものの全体的に炎症が弱いと考えられたため、マウス背景をTh1応答優位なC57BL6からTh2応答優位なBalb/cに変更する必要があると考えている。ただしこれは想定内でありBalb/c背景への戻し交配は26年度中に完了している。一方、T細胞分化に関わる転写因子の発現解析や、T細胞およびB細胞が消失した免疫不全であるRAG-1欠損マウスに正常なCD4+CD45RBhigh細胞 (ナイーブTh細胞)を導入し、制御性T細胞の不在による腸炎を引き起こすモデルの解析は計画通りに行ったが、有意な結果は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初よりマウス背景をTh1応答優位なC57BL6背景からTh2応答優位なBalb/c背景に戻し交配しており、現在8世代の戻し交配が完了し、27年度より使用可能である。C57BL6背景では主要なサイトカイン発現で明確な差が見られなかったため、今後はBalb/c背景のLPA5欠損マウスを用いてオキサゾロン誘導性腸炎モデルを試験する方針である。T細胞に主眼をおいた実験では今のところ有為な結果が見えないため、今後はNKT細胞およびB細胞に主眼をおいた解析に力点をおきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗の結果、マウス背景の変換が優先と考えられたため、27年度に予定していた比較的経費のかからない戻し交配を優先し、一方で26年度に予定していた研究内容を27年度に新たなマウス背景で行う計画に変更したため、27年度以降により多くの研究費用が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画のうち26年度中に行った①オキサゾロン誘導性腸炎の惹起とサイトカイン発現解析・免疫細胞FACS解析③RAG-1欠損マウスへのCD4+CD45RBhigh T細胞移入により惹起される腸炎について再度新たな背景のマウスで行い、それに伴う試薬・消耗品類に充てる。
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