研究課題/領域番号 |
26460962
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 俊太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70598713)
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研究分担者 |
平田 喜裕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10529192)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 腸内細菌 / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
本研究ではコリバクチン産生性大腸菌の大腸癌発生への関与、病原性そしてスクリーニング法を検討している。 H26年度は、当院の倫理委員会の審査を経て腸内細菌と消化器疾患に関する観察研究として、大腸検査施行時の腸管洗浄液を採取した。腸管洗浄液をマッコンキー培地で培養することにより大腸菌の菌量をcolony forming unitで測定した。培地から大腸菌を単離しそれぞれの株から細菌DNAを抽出し、PCR法によってコリバクチン遺伝子(clbB)の陽性大腸菌を分離した。clbB遺伝子陽性株についてはpks genotoxic island遺伝子群の別の遺伝子(clbA, clbQ遺伝子)についてもPCR法で陽性であることを確認し、pks genotoxic island遺伝子群全体を有している大腸菌であると考えられた。 採取した腸管洗浄液は遠心し、沈殿物を蛋白分解して細菌DNAを抽出した。DNAより細菌の16S rRNAと大腸菌のユニバーサル遺伝子(uidA)、コリバクチン遺伝子(clbB)に対するプライマーを用いてPCRで増幅し、腸管洗浄液中の細菌数、大腸菌数、コリバクチン陽性大腸菌数の半定量を行った。 現在までに約50例のインフォームドコンセントを取得した患者より腸管洗浄液を採取しており、約30%の症例でclbB陽性大腸菌がみられている。コリバクチン陽性大腸菌の有無、菌数や全大腸菌数と大腸癌の関係について解析をはじめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに大腸癌症例20例、非大腸癌症例30例より腸内細菌DNAを抽出できており、clbB陽性大腸菌も3株単離しえた。これらの細菌株についてはPCRによってpks遺伝子座全体を有することが明らかになっている。現在までに腸管洗浄液の採取から培養、DNA抽出、q-PCRによる定量までをほぼ確実に施行する実験系が構築している。
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今後の研究の推進方策 |
大腸癌およびコントロールの症例を増やしてさらに腸管洗浄液と抽出DNAを採取し、また臨床情報を統合してコリバクチン陽性大腸菌と大腸癌の関係の解析を行う。 コリバクチン陽性大腸菌の病原性を明らかにするためにコリバクチン陽性大腸菌とそのノックアウト大腸菌もしくは、コリバクチン陰性大腸菌を培養細胞株に感染させ、アポトーシスやサイトカインの発現などを測定し、コリバクチン遺伝子が宿主の上皮細胞に与える影響を検討する。 またコリバクチン陽性大腸菌保有者のスクリーニング法を検討するためにコリバクチン遺伝子 (clbA, clbB, clbQ, clbR)をクローニングし、GST融合蛋白を精製し、患者血清を用いたELISA法を検討する予定である。
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