研究実績の概要 |
H26年度は、当院の倫理委員会の審査を経て大腸検査施行時の腸管洗浄液を採取し、大腸菌の培養、細菌DNAの抽出を行い、PCR法によってコリバクチン遺伝子(clbB)の陽性大腸菌株を分離した。pks genotoxic island遺伝子群の別の遺伝子(clbA, clbQ遺伝子)についても陽性であることを確認した。細菌DNAは、qPCRで細菌数、大腸菌数、コリバクチン陽性大腸菌数の半定量を開始した。 H27年度は、前年度に引き続き腸管洗浄液を収集し、腸内細菌DNAの検討を進めた。現在までに110例よりインフォームドコンセントを取得し腸管洗浄液からDNAを抽出した。現在のところ約35%の症例でclbB遺伝子陽性であり、pks陽性大腸菌の保有率も同程度と考えている。疾患別にコリバクチン陽性率を検討したところ、大腸癌40例中14例 35%、大腸腺腫45例中18例 40%とほぼ同程度であった。炎症性腸疾患では5例中1例 20%であった。病変を認めない正常コントロールのDNAでは20例中9例 45%と腺腫、大腸癌症例とほぼ同程度であった。現在さらなる症例数の蓄積と、pks陽性大腸菌の相対菌量との関係などの解析を加えている。 またpks genotoxic island遺伝子群のなかのclbP遺伝子産物は、コリバクチンの活性に影響をおよぼすと報告されている。我々は患者より単離した7株のpks陽性大腸菌(UT009SC, UT060SC, UT063SC, UT081SC, UT126SC, UT158SC, UT186SC)について1515bpのclbP遺伝子の配列決定を行った。結果6株はリファレンス遺伝子(K12 substrain. MG1655)と完全一致であったが、UT081SC株でVal (385) > Ala(385) の変異があることが分かった。
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